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すべては大福のために【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

2017年に長野県・八ヶ岳の階段が朽ち果てたボロ小屋を200万円で買い、そこから腰越(鎌倉市)との2拠点生活が始まり、プライベートドッグランを作ったり、家をこつこつ補修したり、現在に至るまで悪戦苦闘してきた。

改修し続けた山の家

当初は雨漏りはするわ、隙間風はすごいわ、知らぬ間にアリが行列を作っているわ、ネズミが夜中に屋根裏を走り回るわ、本当にボロ小屋だった。断熱材も入っていないようだから、当初はサマーハウスと考えて、冬は来ないほうがいいと言われていた。
それでもFF式ストーブ(外の空気を取り入れて燃焼させ、燃焼後の排気を自動で排出する)を入れて、夜は電気毛布にくるまって寒さに耐えながら、冬の八ヶ岳に通うようになった。そのために中古の4WD車を買い、スタッドレスタイヤを装着した。雪国ではないけれど、八ヶ岳の冬の路面は凍結して危ないからだ。
春になると、雑草が活動し始める。そのために使ったことなかった草刈り機も購入した。放置しているとせっかく苦労して作ったドッグランが侵食されるので、ひたすら刈りまくる。でも敷地は約300坪あり、あっちを刈ったらこっちが生えてきて、終わりない闘いの日々が続く。
一段落したと思ったら、テラスや外壁などにオイルステインを塗らないといけない。そのままにしていると紫外線でどんどん木材が劣化していくので、それを防ぐため1年に1回は上塗りしたほうがいいからだ。
ドッグランにウッドチップを敷き詰めたこともある。でも業者は家の前の道路にウッドチップを下ろすだけ。上までは運んでくれない。だから大きなバッグに詰め込んで階段を何十往復もした。夏はエアコンがいらないほど涼しい八ヶ岳(標高1450メートル)でも、私は休日の度に汗だくになっていた。しかもウッドチップは失敗に終わった。

大福のため、山へ移住

家の中もボロかった。風呂は古くて汚いから使わず、近くの温泉に通った。トイレは今どき汲み取り式で、キッチンも低くて狭くて使いづらい。
それでも、こんなボロ小屋なんか買うんじゃなかったと思ったことは1度もない。なぜなら、山に来る度、大福がニコニコしてうれしそうにするからだ。だから寒い冬も通うようになったのである。
少しでも快適に過ごしたいと、少しずつリフォームしていった。5年ほどかけて、リビング、吹き抜けの2階を寝室に改装したり、デッドスペースに私の仕事部屋を増設したりした。
そして2023年11月、腰越の夏のあまりの暑さに耐えかえて、八ヶ岳に完全移住した。その頃には、当初のボロ小屋とは比べ物にならないくらい過ごしやすい空間になっていたのも理由の1つだ。
この連載でもちょくちょく書いていたのでご存じの方もいると思うが、セカンドハウス購入からリフォーム、完全移住にいたるまで、計画的にやったことではない。その点について我ながら呆れるが、すべては大福のことを1番に考えていたら結果としてこうなっていただけである。けれど、気がつけばそんな暮らしが私にとっても心地よかった。
そのあたりのことを1冊にまとめた『犬のために山へ移住する(草思社刊)』が出版され、まもなく2025年12月24日ころには書店に並び始める。この連載をまとめた『犬の笑顔が見たいから(世界文化社刊)』から5年ぶり、書き下ろしとなると『またね、富士丸。(世界文化社刊)』以来の15年ぶり。
近年の猛暑から、おそらく犬と暮らす人は私と同じように山にセカンドハウスや移住を真剣に考えて始めている方も多いのではないかと思う。
あまり深く考えず「ボロいけど、なんかここいいね!」だけで決めた私だったが、後で苦労したことや、失敗しないための経験者からのアドバイス、どこをどうリフォームしたのか、かかった費用(わが家のケース)まで赤裸々に書いたので、参考にしてみてください。
犬のために山へ移住したいという人の気持ちはすごく分かるので、応援する気持ちで書きました。頑張ってね。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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