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福ちゃん12才になる【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

2026年1月11日で福助が12才になった。元ノラの放浪子犬なので推定だが、ほぼそのあたりが誕生日だろう。もうそんなに一緒にいるのか、と毎年思う。

信頼と絆を作っていった福助の子犬時代

誕生日記念に12年を振り返る写真を『インスタグラム』にアップしてみたが、わが家に来た当初は本当に怯えて不安そうな顔をしていたことを思い出した。それは親とはぐれてさまよっているところを捕獲されたトラウマ(※保健所の職員さんは悪くない)からだろうけど、当初は人間不信で抱き上げようとすると牙をむくほどだったっけ。
でもなぜか大吉にはすぐ心を開き、私ら夫婦には近寄って来ないけど、大吉の後ろをずっとついて回るようになった。それでも夜、寝るときに寝室へ誘っても来ず、ひとりぼっちでケージで寝ていた。
そんなある日、夜中に地震で目が覚め、「福ちゃん大丈夫か?」とリビングに行くと、「あわわわわわ」という感じでひとりであたふたしていたので「寝室に来るか?」と言うと、その夜から一緒のベッドで眠るようになった。
怯えた子犬に、最初は腫れ物に触るように優しく接していたけど、だんだん面倒くさくなってきて、「噛みたければ噛め」と雑に接するようになると、そのうち「こいつには抵抗してもむだだな」と諦めたのか、なすがままになっていった。

大吉と福助、変わらぬ2頭の関係性

そうして人間不信を克服してからは、だんだんやりたい放題になり、破壊王に変身した。『富士丸』と暮らした経験から、幼い犬の破壊活動はそのうち必ず収まることを知っていたし、しかってもどうせ言うことなんて聞かないだろうから破壊されないようガードして対策した。
すると、ガードしようのないソファーをボロボロにされたり、どうやったのか壁紙をビリビリ引き裂いたり、枕を噛みちぎって寝室を羽毛だらけにしてくれたり、いろいろやってくれた。
ちょっと不満だったのは、大吉は一切教育しれくれなかったことだ。よく先代犬が後輩にここで暮らすルールみたいなものを教えてくれるというが、大吉は何もしてくれなかった。帰宅して、破壊されたものを発見し「あ!」と言うと、大吉は「それ、オレじゃないからね」という顔をしていた。「そんなことわかっとるわ!」と何度思ったことか。
そんな時代もあったけど、やはり破壊活動は3才ころに自然にしなくなり、その後は天真爛漫に生きてきた。本当に恵まれているなと思う。バトルするときも、ちゃんと手加減してくれて、うざがらず相手をしてくれて、しつこくても本気で怒ることはなく、いつも優しい目で見守ってくれる大吉がいてくれて。
間違いなくそのせいだと思うが、12才になる今も性格はガキンチョのままである。もちろんもう何の悪さもしないし、しかることなどないのだが、未だに大吉に襲いかかったり、芝生や雪でひとりゴロゴロしたり、行動がお子ちゃまなのだ。でもそれで困ることなんて何もないし、体力的にもまだまだ元気だから、そういう姿を見られることがうれしい。
大吉も福助がかわいくて仕方ない様子だ。大吉がいてくれて良かったなと思う反面、福助が加わってくれて良かったという部分が大きい。もうそんなに早く年はとらなくていいよ。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
ツイッター
インスタグラム

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
『犬のために山へ移住する』(草思社刊)
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