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海の顔と山の顔「穴澤賢の犬のはなし」

海の顔と山の顔

異常に暑かった夏も終わり、やっと涼しくなった。夏のように気温を気にして早起きしなくて良くなったが、仕事もあるから6時半くらいには散歩に行くようにしている。しかし彼らはこの前書いたように、相変わらず呼んでもなかなか起きてこない。

ダルそうに起きたと思ったら、大吉も福助は散歩に出てもテンションが低い。朝の海辺を歩いているのに、景色を見るそぶりもない。用を足したら、すぐに帰りたがる。毎朝海辺を散歩できるなんて、結構贅沢なことだと思うのだが、彼らは「広大なトイレ」くらいにしか認識していないらしい。海をバックに写真を撮ろうとしても、露骨に面倒くさそうな顔をされる。
そんな彼らだが、山の家に行くと態度が一変する。出かける用意をしている段階から「山?もしかして、山行く?」と目をキラキラさせて、到着すると昨年頑張って自前で作ったドッグランを走り回る。それも、テンション高く。
バトルしていたかと思えば、ボールを投げろと要求してきて、飽きることなく遊んでいる。「もうそろそろ家に入ろう」と声をかけても、大吉はなかなか帰ろうとしない。また、ドッグランとは別に朝夕は散歩に行く。そのときの足取りも、ふだんとは全然違って、後ろ姿がウキウキしている。
たしかに砂浜でノーリードにはできないし、山は気温が低いが(だいたい10℃ほど)、そのあたりが影響しているわけではなく、単純に「海より山が好き」というだけではないかと思う(水遊びにはまったく興味がないし)。もしくは、「日常」と「非日常」なのか。
とにかく大吉も福助も、海の近くと山にいるときでは、顔も態度も全然違う。人と犬では、表情筋は全然違うはずだが、はっきりわかる。そんな露骨に顔に出さなくていいのに、と思うほどに。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。株式会社デロリアンズ代表。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。
ブログ「Another Days」


大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雪と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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