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謎の便意コントロール力 【穴澤賢の犬のはなし】
以前にも書いたことがあるように、大吉は「スムーズにする派」なのでいいが、福助はたまに「したいのにしない病」を発症するので困る。長く暮らしてきた中で、もよおしているかどうかは、だいたいわかるようになっている。歩く後ろ姿とリードを引く力で伝わってくるのだ。
そしたら案の定、ウンチングスタイルになるので「よし」と思うと、何かが違うというような顔をしてまたスタスタ歩き出したりする。何度か繰り返して、出してくれれば安心できるのだが、結局しないことがある。そういうときは、大吉だけ家に置いて、福助のみ再び散歩へ行く。催促されるわけではないが、したいのがわかっているだけに逆にこっちが落ち着かないからだ。
2度目でしてくれればそれでよし。しかしそこで、たまたま前方から散歩している知らない犬と飼い主が歩いてきたとする。そしたら、すれ違うときにそっちに注意が向いてしまうのか、便意のスイッチが切れたようにも「もよおしてるオーラ」が消える。そして結局しないのだ。さっきはウンチングスタイルにまでなっていたのに。
そのまま朝だったら夕方、夕方だったら翌朝というように次の散歩まで、しない。よくそこまでがまんできるものだと不思議に思う。大吉だって、朝しなければ夕方の散歩でする。耐えられなくなったり、おなかの調子が悪かったりして、家の中のトイレですることもあるが、せいぜい半年に1回あればいいほうだ。 ここ1年はない気がする。
自分に置き換えて考えてみると、そこまで便意をコントロールする自信なんてまったくないし、できるわけがない。そもそも便意なんて生理現象なのに、どうしてコントロールなんてできるのか。しかし、こういう話はよく聞く。「犬ウンチあるある」かもしれない。
謎なのは、「ウンチは外ですること」なんて教えたこともお願いしたこともなく、家でもしていいと思っている。自分のテリトリーで排泄したくないからという説もある。本能的に自分の居場所を隠したいのか、汚れるのを嫌っているのかは知らないが。
しかし、オシッコしたいときはトイレシートにするし、トイレシートは汚れたらわりとすぐに片づける。だから犬が家でウンチをしたがらない理由がわからない。それなのに、大吉も福助も自分で勝手にルールを作り、律儀にそれをちゃんと守っている。なぜそんながまんをするのだろう。そんな彼らに一言いいたい。ウンチしたかったらがまんせずにしろよ、健康のためにも。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。
ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雪と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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