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犬は何も悪くない【穴澤賢の犬のはなし】

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実は2015年に法人化してからは、税理士さんに記帳代行をお願いしている。それまでフリーランス時代は自分で確定申告していたが、会社になると決算書なども作らなくてはならず、とてもじゃないが自分ではできなくなったからだ。そんなことから定期的に打ち合わせしている。


先日、税理士事務所に伺うと、なんと黒柴の子犬がいた。ご夫婦で営んでいるのだが、少し前に犬を迎えたいという話は聞いていた。新しい飼い主を探す募集サイトもあることなどを教えたが、いつか黒柴と暮らすのが夢だったという。生後2カ月ほどのメスの子犬だった。だっこさせてもらったが、それはもう、めちゃくちゃかわいい。首すじをなでると「くぅくぅ」いう。


しかし奥さんは子犬のことでちょっと悩んでいると、少し暗い顔をした。事情を聞くと、離れようとすると泣きわめく、そこら辺でウンチやオシッコをしてトイレをなかなか覚えてくれない、ごはんを与える前はテンションマックスになり暴れる、またに噛まれて痛いなど。思わず「そんなの当たり前じゃないですか!」と大声を出してしまった。


生後2カ月なら、まだ兄弟と遊んだり、母親に甘えたりする時期だ。ひとりになるのは寂しいに決まっている。食べることを喜ぶのも自然なこと。ウンチやオシッコする場所を覚えるのもまだ早い。甘噛みは本来、兄弟と遊ぶ中で学ぶことだから、手加減を知らなくて当然。など、とうとうと語ってしまった。


これまで何度も書いているが、そもそも犬は人間社会のルールなど知らないし、守る必要もない。でも一緒に暮らすなら覚えてもらわないといけないことがあるからお願いしているのであって、犬は何も悪くない。しかも生後2か月で覚えられるわけがない。そんなことより、たっぶり愛情をそそいで信頼関係を築くことの方が大切だ。そうすれば、後でなんとでもなる。


この先、少し成長したら吠えて何か訴えてきても、無視して「吠えたからといって自分の要求が通るわけではない」と覚えてもらう時期が来ると思う。でもそれは今じゃない。だからできるだけ甘えさえて、そそうをしたら掃除を頑張ればいいんでんす、と力説した。そしたら「穴澤さん宅の犬たちは、いたずらとか粗相はしなかったんですか?」と聞かれたので「されまくりですよ」と答えた。


大吉はこっちが拍子抜けするほど優等生だったが、福助は小さいくせに、大型犬の富士丸よりも破壊王だった。そのうえ捕獲されたときのトラウマも抱えてたから、結構大変な思いをしたものだ。けれど、かつての苦労がうそのように今ではまったく手のかからない「丸いやつ」になっている。


そんな話をすると、奥さんは気持ちが少し楽になったと言っていた。私が見る限り、その黒柴は大人しくて、とてもいいコだった。これからはたくさん甘えろよと、首をなでなですると、黒い小さな瞳でまっすぐ見ながら、また「くぅくぅ」鳴いていた。


でもよく考えたら、犬と暮らすのがはじめてだと、悩むものかもしれない。私だって、かつての富士丸の破壊活動にも結構悩んだし。しかし後になって、それは自分が悪かったんだと気がついた。だから今、もし悩んでいる人がいたら言っておきたい。彼らは何も悪くない。そういうスタンスに立つと、気持ちが少し楽になるからね。


※追伸
先日書いた記事について、初期にボランティアをしていた方から、残念ながらご指摘の通りで、最初の頃にいた志の高い社員さんもほとんど辞めましたとメッセージが届いた。実はこのような話は一人ではなく、記事を書く前から複数聞いていました。一応、報告まで。ただ、特定の団体を非難する意図ではなく、将来は動物愛護団体が必要なくなればいいのにというのが本心で書きました。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雪と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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