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庭駆け回る大福【穴澤賢の犬のはなし】

2月の頭に山の家に行ったときのこと。朝起きると、雪が積もっていた。15センチくらいだろうか。山の家がある原村は決して雪深い地域ではないから、結構積もったほうだろう。家の前のドッグランは新雪でふかふかしている。玄関のドアを開けて、大吉と福助に「ほら、行ってこい!」と声をかけると、テンションマックスで階段を降りていく。

そして雪のうえを駆け回る。冷たくないのか?と思うが大丈夫らしい。顔を輝かせながら飛び跳ねている。福助にいたっては、顔からズボッと雪に刺さっている。かと思ったら、バトルがはじまる。楽しくて仕方ないといった様子。よかったなお前ら、と思いながらそんな姿を眺める。

しかし、雪の何がそんなに嬉しいのだろう。若いころ、スキーツアーを企画する旅行会社に勤めていたころ、現地駐在員として雪国の野沢温泉に4カ月ほどいたことがあるが、「寒いから嫌」という理由でスキーなど一切しなかった私には、まったく理解できない。でも彼らが楽しいならそれでいい。

思えば、富士丸も雪が大好きだった。ハスキーの血が入っていたせいもあるのだろうが、雪を見ると狂喜乱舞していたっけ。寒がっている姿を見たこともないし、あげくの果てには雪の上でうとうとしていたものだ。それにしても、大吉はいつから雪が好きになったのだろう。

あれは大吉が、まだ1才のころだっただろうか。当時は渋谷区初台に暮らしていたが、珍しく雪が積もった日があった。富士丸との経験から喜ぶに違いないと散歩に行くと、ものすごくテンションが低く「何これ、冷たいんだけど」と不快な顔をしていた。その反応に「えぇー!!」と本当に驚いたが信じられず、試しに雪玉を作って大吉に向かって投げてみた。

富士丸はこうすると、雪玉を空中で「バクッ!」とキャッチして破壊するのが大好きだったからだ。しかしこのとき大吉は、雪玉を見ているだけで反応することはなく、そのまま顔面にあたってくだけた。そして「なんでそんなことするの?」という目で見られたのだった。
※2012年2月
※2012年2月
※2012年2月
※2012年2月

それが今では、雪のうえでこんなにはしゃぐようになって。福助は、はじめて雪を観たときから大喜びだったが。犬も個性が色々なんだね。なぜ大吉は雪が好きになったのか理由はわからないが、まぁ楽しそうで何より。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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