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驚くべき福助の記憶力【穴澤賢の犬のはなし】

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犬と暮らす人は実感していると思うが、犬も人を覚える。初対面の人には少し緊張していても、何度か会っているうちに打ち解けてくる。フレンドリーさに個体差はあるが、「あ、どうもはじめまして」から「やぁ、久しぶり!」へと態度が変わっていく。もちろんいつまでもよそよそしい犬もいるが、覚えているのかどうかは近くで見ている人にはわかると思う。

普通の犬たちの記憶

見た目だけではなく、その人がどんな人なのかも覚えていて、好きなのか少し苦手なのかもある。おやつをくれるなど、自分が得した記憶がある人に会うと基本的に喜ぶが、見ているとそれだけではなく、それよりもその人が自分をかわいがってくれたかどうか、愛情をそそいでくれたかどうかが重要なようだ。

福助の場合

簡単にいうと、ワシャワシャなでてくれたり、たくさん遊んでくれたりした人のことを犬は大好きになる。その人と数年後に会っても、しっかり覚えていて大喜びする。富士丸もそうだったし、大吉もまったく同じだ。だから犬というのはそういうものなんだろうと思い込んでいたが、福助は違う。

何度会ったことがある人でも、3カ月会わないと忘れているようなのだ。その人が再び家に遊びに来たときの「誰だお前!」という吠え方でわかる。それは以前にも書いたことがあるが、2才の頃だったから、この先成長したら変わるんだろうなと思っていた。が、5才になる今も同じだ。少し会わないと、また「誰だお前!」に戻る。

しかも完全に忘れているわけではなく、なでられたりしているうちに「あれ?オレ、この人前に会ったことあるかも?」という態度に変わる。ばかなんだろうか。

福助の音を覚える力

しかし福助は、音の記憶力は優れている。たとえば、わが家では夜私が晩酌するときに大福におやつをひとつずつあげるのが『勝手にルールになっている』と書いたが、缶ビールを開ける「プシュ!」という音で、福助が飛んでくる。なぜかわからないがその前の冷蔵庫を開けた音くらいで動き出す。それまでも冷蔵庫は何度も開けているし、時間は毎晩違うのに、なぜビールを取り出すときだけわかるのか。天才なんだろうか。

そのいっぽう、夜に玄関のドアが開く音がすると「誰だ!」と吠える。チャイムを鳴らしていない時点でお客でも宅配便でないことは明らかだし、もっといえばそれが嫁であることは日々の経験からわかると思うのだが。それでも毎晩ドアが開く音で「誰だ!」と吠える。やっぱり、ものすごくばかなんだろうか。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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