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自己中な弟のおかげで【穴澤賢の犬のはなし】

前にも書いたかもしれないが、大吉と福助にオモチャを与えると、必ず繰り広げられる攻防がある。基本的に犬は不公平に敏感なので、毎回1個ではなく、2個用意するようにしている。で、それを渡すとどうなるか。

いつもの攻防

大吉と福助にひとつずつ渡すと、福助はすぐに自分の方は放ったらかして、「やっぱりそっちがいい!」と大吉の方を奪おうとする。すると大人な大吉は放ったらかされた方に行く。
そうすると福助は「そっちがいい!」と考え直し、また奪いに行く。断っておくが、これはオモチャの引っ張り合いをしたいのではなく、ただ単に奪おうとしているだけだ。見ていると、それがよくわかる。とにかく隣の芝が青く見える派らしい。

大人な大吉

何度もそれを繰り返し、あわよくば2つとも自分のモノにしようとする。なんだろう、この気持ちいいくらい自己中っぷりは。ここまでくると、私だったらたとえ相手が自分より年下だとしても「ええ加減にせえよお前!」とぶち切れると思うが、なぜか大吉は怒らない。
さすがに2つとも差し出すことはないが、常に余っている方を選ぶ。そしたらまたワガママ野郎が奪いに来て、本気を出せば圧勝するはずなの大吉が、なぜか引っ張り合いでも手加減してやるのだ。大人すぎる。尊敬してしまう。末っ子として育った私には、この懐の深さはない。

情けない末っ子

そんな攻防を繰り広げていると、アッという間にオモチャは破壊される。そう思って安いオモチャを選んでいるから、別にいいが。それにしても、やりたい放題の福助はどこからどう見ても、褒められるところがない。誰が見てもガキンチョだ。
唯一いいことがあるとしたら、こんな悪ガキがいるおかげで、8才になる大吉が未だにオモチャで遊ぶことだろうか。あぁもう、散らかしてくれやがって。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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