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山中引き回しの刑【穴澤賢の犬のはなし】

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前回書いた福助ウンチモードには続きがある。普段は近所の砂浜を引きずり回されるのだが、比較的短時間で終わる。ウンチモードになればするか、解除されるか、だいたい30分以内には結論が出る。しかし山の家に行ったときはそうはいかない。

いつスイッチが入るのか

山の家は「丸山の森」という標高1400メートルくらいの別荘地にあるのだが、全体的になだらかな坂道になっていて、ほとんどの道路は舗装されていない。そこを散歩するのだが、道は毎回、大福にまかせている。

彼らはアスファルトの上でなぜかウンチしないので自宅のある鎌倉・腰越では砂浜に行くが、山ではどこを歩いても一緒なので、好きなように歩かせて、後を付いて行くようにしている。そこでも大吉はわりとすぐにするのだが、問題は福助のウンチモードだ。

気まぐれ福助に振り回される

草むらをクンクンとかぎ回って、くるくる回ったから間もなくするだろうと見ていてると「うーん、なんか違う」という顔をして、またスタスタと歩き始める。それを何度も繰り返す。舗装された平坦な道ならまだいいが、砂利の坂道だから結構しんどい。

さらに、分かれ道で登り坂を選択されると「まじか!」と思う。なだらかな坂道といっても、それがずっと続くのでさすがに息が上がってくる。それでもウンチモードでズンズン歩いていき、くるくる回って「なんか違う」と仕切り直す。

地味にしんどい「山中引き回しの刑」

長いときは、1時間以上やる。これを「山中引き回しの刑」と呼んでいる。そのうち思わず「何が違うんじゃ!どこでも一緒だろうが!」と叫びたくなるが、そんなことしたらモードが解除されてしまうかもしれないから、黙って心を無にして付いていく。

私は若い頃からジョギングとかハイキングとは一切無縁で生きてきたので、1時間坂道を歩くだけで本当に疲れる。でも文句は言わない。ひらすらついていく、せめて次は下り坂を選んでくれと願いつつ。

「いやぁ、疲れたわぁ〜」

感心するのは、大吉は坂道を1時間歩いても涼しい顔をしていることだ。対象的に、福助はバテている。ならなぜとっととしないのかと思うが、文句は言わない。そしてようやく御眼鏡に叶う場所が見つかり、ウンチをしたら急いで帰ろうとする。

そして家に着くと「いやぁ、疲れたわぁ〜」という顔をしている。「お前のせいやろうが!」と思うが、文句は言わない。しかし福助のウンチモードがなければ坂道を1時間も歩くなんてことは絶対しないから、おかげで運動になっているのかもしれない。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。

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