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ありがとう、シロさん【連載】おばあちゃん犬がやってきた第93回
我が家は15歳のおばあちゃん犬を引き取り、家族として迎えました。
そんなシロさんも、とうとう立ち上がれなくなってしまって。
きっとシロさんは今日にでも、旅立つのだろうと感じました。
その日はおかーさんはシロさんから離れたくなくて、
同じお布団で横になり、シロさんの柔らかい身体を撫でながら
おかーさんには伝えなくてはならない言葉があることを思い出しました。
最後にシロさんに伝えたい言葉
おかーさんは感謝の気持ちでいっぱいで。
その想いをシロさんに伝えようと思ったその時。
急に涙が止まらなくなったおかーさん
感謝してるのに、"ありがとう"なんて言ってしまったら
シロさんがすぐに居なくなってしまうような気がして。
ありがとう、のたった5文字を言おうとしても
涙で言葉が詰まってしまって。
こんなときでも情けないおかーさんを支えてくれたのは
生暖かい息が顔をかすめ、ふとシロさんのお顔を見つめると
ゆっくりと瞬きをしたシロさん。
その表情が驚くほど穏やかだったので、おかーさん拍子抜け。
何やってんだ、私は。
そんなシロさんから『しっかりしなさい』と言われたような気がしました。
これじゃどっちがおかーさんかわからないね。
泣く時間があるならシロさんの今を、
たくましく生きる姿を目に焼きつけようと思いました。
そうしているうちに、言葉は必要なかったんだと気付きました。
言葉なんて必要ないね
だからね、おかーさんはね。
あなたの名前を繰り返し呼んだ。
この3年間、ご飯のときも、いたずらしたときも、ただいまのときも
毎日欠かさず呼んでいたおかーさんの大好きなあなたの名前を。
シロさん
シロさん
シロさん
大好きだよ。シロさん。
ありがとう。シロさん。
自然とおかーさんの涙は止まっていました。
またしても、シロさんの不思議なパワーだね。
シロさん。いつもありがとう。
ずっと、大好きだよ
暖かい秋の夜に天使になったシロさん
シロさんはおかーさんの腕の中から
ゆっくりとお空へと旅立ちました。
シロさんらしい、穏やかな最期でした。
白い雑種のどこにでもいるような
おばあちゃん犬だったシロさん。
15年間もの長い期間、短い鎖で繋がれ育ったシロさん。
そんな環境下から救ってあげたつもりが、
気付けばシロさんからいろんなものをもらっていて。
救われていたのは、私達家族でした。
そして、この連載がきっかけで多くの方に愛され、
私自身も多くのことを学びました。
時として我が子のようで、
時として友人のようで
時として恋人のようで
時として母親のような存在だったシロさん。
彼女の代わりはきっと誰にも務まらない。
私にとってかけがえのない、大切な存在です。
我が子のように見守り、愛してくれた皆様。
本当に本当にありがとうございました。
天使になったんだよ
tamtam プロフィール
2022年「たまさんちのホゴイヌ」(世界文化社)、2023年「たまさんちのホゴネコ」(世界文化社)を出版。著者印税を動物福祉活動に充てている。
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