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ホームの入居者の死期を察知、その時まで寄り添い続ける元保護犬の姿

社会福祉法人が運営する特別養護老人ホーム「さくらの里山科」。
ペット同伴で入居でき、保護犬も迎えているこの施設の取り組みについて紹介します。

1回目の記事|ある高齢者と愛犬の悲しい出来事がキッカケで、犬と暮らせる特養が誕生!

「人生の最後まで犬とともに暮らしたい」高齢者の願い

ホーム内では、どこでも犬といっしょ。入居者さん同士、いつも愛犬の話で盛り上がり、笑顔が絶えません。
「私が目指しているのは、高齢者が『あきらめない福祉』なんです。
年老いて、認知症になったからといって、犬との生活や、自分が好きだったことをあきらめてほしくない」
と、お話を伺ったさくらの里山科の施設長、若山さんは語ります。

ホームには、高齢になって犬と暮らすことができなくなったから、最後にホームで犬との暮らしを楽しみたい、と単身で入居される方も多いとか。
その思いにも応えるため、若山さんは保護団体から犬を迎えることにしました。

ホームに迎え入れた保護犬の第一号、文福くん

ホームで暮らす元保護犬たち。右が看板犬の文福くん。
「当初から愛護活動を意識していたわけではなく、自然な流れで保護犬を迎えることになったんです。
ホームに動物愛護活動をしている介護スタッフがいて、そのスタッフから保護団体を紹介してもらいました」

そして、保護犬第一号として迎えたのが、ミックス犬の文福(ぶんぷく)くんでした。
現在の年齢は推定10~11才。
のちに「奇跡の看取り犬」として、多数のメディアにも取り上げられることになる犬です。

ホームの看板犬、文福くんの看取り行動とは?

入居者さんの死期が近づくと、部屋の前で半日くらいじっと座っている文福くん。いつも明るい文福くんですが、このときは少し悲しそうな表情に。
ホームでは、100名の入居者さんのうち、年間で約30名の方がご逝去されるそうです。
医師から余命があと少しと診断された入居者さんには、介護スタッフによる「看取り介護」が始まります。

文福くんがホームに来て1年くらいが経ったころ、余命わずかと診断された入居者さんの部屋の前に、じっと文福くんが座っていたそうです。
悲しそうな表情で、文福くんは半日くらい部屋の前に座ったあと、その入居者さんの部屋に入り、ベッドのわきに座りました。

そして、亡くなられる1~2日前になると、文福くんはベッドに上がり、入居者さんのそばにぴったりと寄り添ったというのです。

「初めに介護スタッフのリーダーが文福のその行動に気づき、『まさか……』と思い、半年後、別の入居者さんの看取り介護を行うとき、注意深く文福の行動を見たそうです。
すると文福は再びまったく同じ行動をとったのです。
あるお医者様は、犬は臭気で人が亡くなる時期を察知するのではないかと言っていましたが、本当に不思議です」

死の恐怖を身をもって体験した、文福くんの行動

ホームで飼い主さんと暮らすミックくん。車椅子の飼い主さんのひざの上に乗って、片時もそばを離れないそう。
文福くんは、保健所から救出されたとき、殺処分をするガス室に行く直前の最終部屋にいたそうです。
その部屋では、隣の部屋で殺処分される犬たちの悲痛な鳴き声も聞こえていたと。

若山さんは、「文福は、死の恐怖を身をもって体験しただけに、人の死にも敏感になり、献身的な看取り行動をしてくれているようにも思えるんです」と語ります。

今では、文福くん以外の保護犬も暮らしているホーム。
数々の保護犬をホームに紹介してくれた保護団体のために、ホーム内のドッグランで譲渡会を開催することもあるそうです。


次回は、ホームにいる犬たちの暮らしぶりや、犬が入居者さんに与える影響についてご紹介します。
※掲載されている写真は、施設スタッフが撮影したものです。
掲載するにあたり、施設側およびご家族の許可をいただいています。

※各情報は2020年10月9日現在の情報です。

出典/「いぬのきもち」2020年12月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真提供/さくらの里山科
取材・文/袴 もな
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