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複数飼いだと精神年齢が若くなる?【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

大吉を見ていると、不思議に思うことがある。それは未だにオモチャを「破壊」することだ。もう9才なのに。かつて暮らしていた富士丸は、3才くらいまではオモチャだけでなく、クッションからソファまであらゆるものを破壊してくれたが、次第に落ち着き、5才くらいになるとオモチャすら破壊しなくなっていた。

富士丸の落ち着きぶり

富士丸は7才になるころには、テンションが上がるのはイレギュラーなお出かけと旅行くらいで、ふだんの暮らしではとても物静かで温厚な「オッサン」になっていた。たまに「遊ぼうぜー」とちょっかいを出しても「今そういう気分じゃないから」と、逆に軽くあしらわれたりすることもあった。
そのころの私は30代半ばだったが、精神年齢は完全に追い抜かれたと感じていた。ひどい二日酔いに耐えながら散歩に行き、戻ってから「うぅ、頭痛い〜、気持ち悪い〜」とぐだぐだ寝ている私を、富士丸は「バカじゃないの?」という目で眺めていた。達観したオーラすらまとって。

大吉の落ち着きぶりとやんちゃぶり

けれど大吉は9才になった今もオモチャを破壊する。かといって「お子ちゃま」なわけでもない。この違いは何か。大吉もときどき達観したような顔をするし、ものすごく空気を読む。思うに、福助がいるからではないかと思う。
福助は「大吉のモノも自分のモノ」と思っているので、なんでもかんでも総取りしようとする。2つオモチャをあげても結局そうなるので、最近は1つだけにして勝手に奪い合わせている。だから破壊するのではなく、1つずつあげていたときも必ず破壊して中の綿を引っ張り出していた。
興味深いのは、奪い合いも破壊も、人が見ていないところでは決してやらないということだ。なのに、私がそばで見ていると激しく奪い合う。本気ではなく、けんかになったりはしない。
どうやら、「オレの方が力が強いぞ!」とアピールしたいらしい。だから、ときどきこちらを向きながら、ちゃんと見られているかどうかチェックしたりする。競争心というか、自己顕示欲というか。けど争ってばかりじゃなく、仲はいい。それも遊びの範囲で、2頭いるからこうなるのだろう。
実際、福助を迎える前の大吉は2才なのに寝てばかりで、いつもテンションが低かった。福助にしても、大吉がいるから6才になる今も末っ子根性丸出しのガキんちょでいられるんだろうと思う。
複数飼いは初めての経験だし、大福は仲良くやっているからそう感じるのかもしれないが、兄弟みたいな存在がいるほうが精神年齢が若くなるのかもしれない。そんなことを考えながら、今日も散らかった部屋を掃除する。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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