犬は過剰なストレスにさらされ続けると、問題行動を起こしたり、病気にかかりやすくなったりします。そこで今回は、犬にありがちなストレスのなかから、「お世話」に関するストレスとその対策方法について、獣医師の藤本聖香先生に伺いました。
ストレスが原因で犬の問題行動や病気につながることも
犬もストレスが過剰な状態が続くと問題行動や病気につながることがあります。
精神的な安定が保てなくなり問題行動を起こすことが
犬は「幸せホルモン」のひとつであるセロトニンによって、精神的な安定が保たれています。しかし、ストレスが強すぎたり、繰り返しストレスにさらされたりすると、ストレスホルモンが過剰に分泌され、セロトニンの働きを抑制してしまいます。
その結果、精神的な安定が保たれなくなり、攻撃的に激しく吠える、うなる、クッションを破壊するなどの問題行動を起こすことがあります。
免疫力の低下によりあらゆる病気を招く恐れが
ストレスから病気を引き起こすこともあります。多いのは、自律神経が乱れることに起因する嘔吐や下痢などの「胃腸炎」や、気持ちを落ち着かせようと足やわき腹をなめ続けることで起こる「皮膚病」です。また、免疫力の低下によって「膀胱炎」や「感染症」など、あらゆる病気にかかりやすくなります。
お世話にありがちなストレス(1)お手入れを一気にすませようとする
お手入れは体を拘束されるうえに恐怖を感じることもあるので、苦手な犬が多いです。それなのに、飼い主さんの都合で、長時間にわたりさまざまなお手入れを一度にされるのは、犬にとって苦痛でしかありません。
人でいえば、終わりが見えないほどの大量の苦手な仕事を、一度にまとめてやらされているようなもので、顔面蒼白の事態です。
お手入れはひとつずつ、ごほうびも与えながら行おう
嫌なことはまとめて一度にしようとせず、日を分けてしたほうが、犬もストレスを感じる時間が短くなります。さらに、ごほうびを与えることで、苦手なお手入れを「イイコト」に変換していきましょう。
お世話にありがちなストレス(2)突然、正面から服を着せようとする
犬が服を嫌がるからなどと、正面から急いで服を着せようとするのは、突如目の前が真っ暗になり、恐怖でしかありません。人でいうなら、いきなり袋を頭にかぶせられるようなもので、あわてふためいてしまうでしょう。
また、首を通すタイプのハーネスをいきなり正面からつけようとするのも、犬は同様のストレスを感じます。
犬が自ら服の首元に頭を通すようにおやつで誘導を
服の首元からおやつを持った手を出して誘導し、そこに犬が自ら頭を通すようにさせると、最小限のストレスで洋服を着せることができます。服を輪状にすると、よりやりやすいですよ。犬が頭を通せたら、おやつを与えてほめてあげましょう。
人はストレス要因を自身で気づき回避しようとしたり、ストレスがたまってきたら解消しようとしたりするなど、ある程度自分でストレスをコントロールできますが、犬はそうはいきません。愛犬のストレスをできるだけ軽減してあげられるように、飼い主さんが対策してあげましょう。
お話を伺った先生/藤本聖香先生(英国APDT認定ペットドッグトレーナー 獣医師)
参考・写真/「いぬのきもち」2024年10月号『対策急務!人に置き換えてそのヤバさがわかった!じつはしんどい犬のストレス』
文/宮下早希
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。