骨は姿勢を維持したり、歩いたり走ったりする動きにおいて、犬の一生を支える重要な役割を果たしています。15才超えるご長寿犬が増えてきた今、加齢とともに弱くなっていく骨にも、意識を向けてみることが大切です。
そこで今回は、犬の骨の一生(変化)について、獣医師の枝村 一弥先生に詳しく解説していただきました。
犬の骨の成長は「骨格」と「骨密度」で考える
犬の骨は、体の完成とともにまず「骨格」からでき上がります。骨格完成後も骨の強さに置き換えられる「骨密度」は増加を続け、もともとの骨密度の高さや成長や加齢に伴う増加と減少は、犬の体の大きさによって異なることもわかってきました。
日本大学生物資源学部獣医学科獣医外科学研究室の「犬における骨粗鬆症の診断支援システムの構築と疫学調査」では、骨格の小さい犬は骨密度が低く、一方で骨密度が高い大きな犬は早期から骨密度が減少に転じる傾向が。
次からは、それぞれの骨の変化を追ってみましょう。
体が大きくなる「成長期」は骨も一緒に成長する
犬の骨の数は約320本。小さな体に人の約1.5倍もの骨をもつ犬は、生まれてから体が完成するまでの成長期、体の成長と一緒に骨もぐんぐん成長していきます。
とはいえ、犬の骨は一つひとつが小さかったり、細かったりするなど、骨折や脱臼をしやすい構造ともいえます。やんちゃ盛りの成長期に骨を痛めると、骨格形成にも影響を与えるため注意が必要です。
生まれてから8~18カ月で全身の骨格が完成
小型犬は8~10カ月、中型犬は10~12カ月、大型犬は15~18カ月かけて成犬の大きさに成長し、体の完成とともに骨格も完成します。ただし、骨格は完成しても骨密度は成長途中で、骨は強くなりきっていません。とくにこの時期、小型犬と中型犬は大型犬に比べて骨密度が低いので、骨折などに注意して過ごしましょう。
成犬になると中~大型犬は骨が急成長し、小型犬は微増にとどまる
成犬になると、誕生時に比べて50~70倍も体が大きくなる中~大型犬。もともと骨密度が高いですが、この時期はさらに高まり、一気に骨が強くなります。
そんな骨が強い中~大型犬に対し、小型犬はもともと骨密度が低く、また増加の傾向も微増程度です。抱っこで誤って落としてしまわないなど、引き続き骨折などに注意して過ごしましょう。
中~大型犬は5~7才頃をピークに骨密度は低下に転じていく
小型犬に比べて骨密度が高い中~大型犬ですが、5~7才頃をピークに早くも骨の老化=骨密度の低下が始まります。
見た目にはまだまだ若々しく元気いっぱいな時期だからこそ、飼い主さんは意識的に気持ちの切り替えを。これまでしていた激しい運動も、この頃から骨の負担になることがあります。
小型犬も13才頃から緩やかに骨密度が低下していく
中~大型犬に比べて骨密度が低い小型犬ですが、ゆるやかに長く増加していきます。ピークを越えても急激な減少は見られず、13才頃から徐々に骨密度が低下していく傾向に。この時期は中型犬と小型犬で骨密度の高さが逆転することもあるでしょう。
とはいえ、小型犬から大型犬まで、いずれも骨密度は減少ターンになるため、過度の刺激や強い衝撃は禁物です。
骨がもろくなる目安は15才以上
明確なデータはまだ存在しないものの、犬もハイシニア期になると、骨がもろくなり骨折しやすくなる「骨粗鬆症」が疑われるようになります。この病気になると転倒したり犬用ベッドから落ちたりなど、小さなことでも骨折してしまう可能性が。室内の環境を整えて、犬の転倒や転落を防止しましょう。
犬の骨がどのように変化していくかを知っておくことは、日々のお世話や健康管理に役立ちます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
お話を伺った先生/枝村 一弥先生(博士(獣医師) 日本大学生物資源学部獣医学科獣医外科学研究室教授 日本大学動物病院院長 )
参考/「いぬのきもち」2025年10月号『最後まで元気に歩ける強さを手に入れよう! 愛犬の骨のためにできること』
文/長谷部サチ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。