ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
この連載では、過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、神戸地方裁判所で平成28年12月26日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
ドッグランで大型犬に衝突され、負傷した飼い主さん。衝突してきた犬の飼い主を訴えた!
2頭の大型犬に衝突されて転倒し、救急搬送されたAさん
イラスト/macco
事故があったのは、地域が運営し、無料で自由に利用できるドッグラン。Aさんは夫や2人の子どもといっしょに訪れ、愛犬 のミニチュア・ダックスフンドと子どもたちを遊ばせていました。BさんとCさんの犬は2頭とも大型犬で、Aさんらと同じエリアで追いかけ合うなどして遊んでいましたが、しだいに遊ぶ範囲が広がり、走る速さが増してきました。その様子を見ていたAさんは「興奮してきているのでは」と不安になり、子どもたちに遠くへ離れるよう促しました。
すると、2頭の大型犬は互いに追いかけ合うようにして駆けてきて、Aさんに激しく衝突したのです。Aさんは衝撃によって足をすくわれて、後方に転倒。後頭部を強く打ち、一時意識を失って救急搬送されました。頸椎捻挫や頭部打撲など、全治11カ月の大ケガを負ったのです。Aさんは治療費や慰謝料など損害賠償約140万円を求め、BさんとCさんを訴えました。
大型犬のしつけがなされていなかった責任も追及された
裁判では、興奮している愛犬に声をかけるなどして制止しようとしなかった、BさんとCさんの管理者としての責任が問われました。加えてBさんが「オイデ」などで 愛犬を呼び戻すしつけをしていなかったことにも話が及び、適切にしつけがなされていない犬をドッグランで遊ばせた責任についても追及されました。一方、不測の事態も起こり得ると考えて行動していなかったAさんにも不注意があったとして、認められた損害賠償額から2割が減額されました。
判決は……損害賠償など130万円を支払うよう衝突した大型犬の飼い主に命じた
イラスト/macco
さまざまな犬が走り回るドッグランでは、ほかの犬や人に危害を及ぼさないよう、飼い主さんは細心の注意を払う必要があります。ドッグランに行く場合は、どのようなときでも愛犬が飼い主さんの指示に従えるよう、しっかりとしつけましょう。
参考/『いぬのきもち』2017年7月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/macco