ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。今回は、誰もが気軽に訪れることができる、犬の保護施設「わんだん邸」。犬の保護・譲渡のほか、動物愛護の啓蒙にも力を入れるその取り組みについて紹介します。
「子どもたちのほうが大人より上手に保護犬の心を開くことができるんです」
子どもたちが小型犬の散歩をするときは、必ず大人のスタッフが同行。気を抜かず慎重に歩かせます
2021年8月より、「わんだん邸」の店長として、シェルターの企画、運営に携わる坂口絲子さんは、わんだん邸では小学生や中学生の子どもボランティアも積極的に受け入れることに。ちなみに、関東の動物保護施設の多くは、事故やケガなどの心配があることから、高校生未満の子どもボランティアは受け入れていないそうです。
「わんだん邸でも、子どもたちが保護犬と接するうえで事故が起きないよう、細心の注意を払っています。まず保護者の了解をしっかりとって、子どもたちには、おもにケージの掃除や、小型犬と遊んだり、おやつをあげる係などをお願いしています。作業はすべて大人の目が届く範囲でのみ行ってもらいます」と坂口さん。
ひとり暮らしの飼い主さんが亡くなったあと、飼い主さんを待ち続けていた柴のナナコちゃん
そして、子どもと接することは保護犬にとっても、多くのメリットがあると解説してくれました。
「保護犬のとくに野犬などは、捕獲されて保護施設に収容されている間、大人としか接する機会がないんです。そのため、初めて子どもを見たときに、怖がってパニックを起こすことも。シェルターに来た保護犬を、早い段階から子どもたちとふれあわせると、苦手意識もなくなり、譲渡時にも、安心して子どものいる家庭に送り出すことができるんです」
目的意識をもってシェルターで働く子どもボランティアたち
子どもたちの手作りによる「犬のおやつガチャ」。お客様が楽しみながらおやつを購入することができます
取材当日、わんだん邸では、坂口さんのお子さんと、中学3年生のMさん、高校3年生のSさんが、子どもボランティアとして一生懸命働いていました。保護犬たちのトイレシーツの交換、ケージや犬舎内の拭き掃除、小型犬の散歩など、やることはたくさんあります。
中学3年生のMさんは、保護犬の殺処分に関する本を読んだことがきっかけで、ボランティア活動を始めたそう。
「関東にあるいくつかの動物愛護施設に直接出向いて、ボランティアに志願したのですが、受け入れてもらえず、ネットで調べてわんだん邸を見つけたんです。今は勉強があるので週に1回だけ通っていますが、毎回保護犬たちと会うのが楽しみ」とMさん。将来は動物にかかわる仕事につきたいとのこと。
ブリーダー崩壊現場からレスキューされたルークくん(推定7才)は、おっとりした性格
「心に傷を負った保護犬でも心からの愛情を与えれば、また人を信じてくれるように」
この日、わんだん邸には新しい家族を待つ10頭の保護犬たちがいました。他県で放浪していた元野犬、ブリーダー崩壊現場からレスキューされた犬、飼い主さんから飼育放棄された犬など、さまざまな事情を抱えた犬たちです。最初は人になれなかった保護犬でも、スタッフや訪れるお客様の心からの愛情を受けるうちに、だんだんと心を開いていきます。
常連のお客様が来たときは、保護犬たちは大喜び。さっそくおやつをねだりに集まってきます
営業中は、シェルター内の広いフロアに、相性のいい保護犬を交代でケージから出して、自由に遊ばせるようにします。お客様には常連の方も多く、保護犬たちは常連さんが来ると大喜びでお出迎えをして、おやつをねだったり、おもちゃで遊んでもらったり。そんなはしゃいでいる保護犬たちのなかに、一頭だけ常に緊張した顔つきの犬がいたので、坂口さんに聞いてみました。
「そのコは、1年前に四国から来た元野犬なんですが、常にほかの保護犬を見守る中心的な役割をしているんです。シェルターでの犬同士のケンカを止めてくれたり、あいさつの仕方を新入りの保護犬に教えたり、私たちスタッフの助けになってくれるんですよ」とのこと(1回目の記事を参照)。
犬のコミュニティの奥深さも実感させられました。
個人宅の多頭崩壊現場からレスキューされたトイ・プードルのチョコくん(6才)
次回は、新しい家族に迎えられ、幸せになった卒業犬についてご紹介します。
※保護犬の情報は2022年2月4日現在のものです。
出典/「いぬのきもち」2022年4月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/わんだん邸
取材・文/袴 もな