犬が好き
UP DATE
事故が防げて犬も苦しくない、おすすめのリードの持ち方|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.89
今回は、リードを正しく持つことが、いかに重要かがわかるお話。西川先生のしつけ教室の近くで、リードの持ち方も原因のひとつとなった事件が起きた模様。先生が、飼い主さんたちにまず最初に教えるのが「リードの持ち方」。それを今回、コラム内でレクチャーします(編集部)。
え? なんかやらかした? ワタクシ。
警察から電話なんて、それも刑事課だという。
交通違反どころの騒ぎではない。気がつかないうちに、窃盗か、傷害か、殺人か、何か犯罪を犯していたのか?
とはいえ、心当たりは全くないわけで。
何の話かというと、「犬が関係する事件」に関してだそうで、専門家の意見を聞きたいとのことでした。
はて、犬をトレーニングして何かを盗ませたか、誰かを襲わせたか(コラムVol.71もぜひご一読を)。
くわしくは電話ではなく直接お会いしてとのこと。後日、駒沢のスクールの方に刑事二人が尋ねてきました。
犬が他人に危害を加えた事件
2頭の大型犬を散歩させていた80歳代の飼い主が、犬の動きをコントロールできずに、結果他人にケガを負わせたというもの。
犬にまつわる事件は、本誌『いぬのきもち』の連載にある「犬の事件簿」に数多く紹介されているので、私もそこそこは把握しているつもりでした。
ただ、私が知っているすべての事件は民事事件。
民事不介入とよく耳にするように、警察が関与しているのであれば民事では済まされていないということ。
もちろん、飼い主は意図してそうした事故を起こしたわけではありません。
でも、何かしらの落ち度、過失、未必の故意というやつがなかったのか?
80歳代の飼い主が大型犬2頭を同時にお散歩していること、それ自体そもそも問題はあるように感じたのですが、問題はそれ以外にもありました
何に問題かあったというと、リードの持ち方です。
事故を未然に防げないリードの持ち方
出会い頭に犬が他人に吠えつき、ビックリした相手がひっくり返ってケガを負った。犬は相手の体に触れたわけでもないが、なんと1000万円以上の支払い命令が出ていた。
犬がもし相手に飛びかかっていたとしたら、賠償額はさらに跳ね上がっていたはずです。
そうした事実を鑑み、私の教室では22年前の開校当時から、パピークラス(生後4カ月齢以下の犬対象)以外では、事故が起こりにくいリードの持ち方を初回に指導している次第です。
リードのどの位置を、どう持つか?
すなわち、これは安全を担保できるか(事故を防げるか)、という視点が重要ということなのです。
他人への飛びつきを防げること、拾い食いを防げること、飛び出しによる事故を防げること、飼い主が引き倒されないこと。
問題の飼い主は、2頭の2本のリードを結んで一本の状態にし、その一本の状態のリードの中間地点を持っていたということでした。
いずれの事故を防ぐことは難しい、そういわざるを得ません。
ちなみに多くの飼い主は、リードの輪っかの部分に手首を突っ込むだけの持ち方をしています。しかしながらそれとて同様、いずれの事故を防ぐことは難しいのです(伸びるリードも然り/当コラムVol.26参照)。
セーフティグリップを作り、そこを握る
実は、他人への飛びつきも、犬の拾い食いも、飛び出しの事故も、飼い主が引き倒されることも防げ、かつ犬が苦しくない、リラックスしてお散歩が楽しめる位置が、ちゃんと探せばあるのです。
その位置に結び目を作る。その結び目を「セーフティグリップ」と教室では呼んでいます。そして、クラスの初日にそのグリップを作り、以降そこを常に握ってもらうように、指導するのです。
「大変参考になりました」そう言葉を残して、刑事さんたちは帰っていきました。この事件の結末がどうなるのか、どうなったのかは定かではありません。ただ少なくとも、今まで民事で済んでいた犬にまつわる事件が刑事事件として扱われるケースが増えていく、そのことは容易に想像できます。
リードのどの位置を持つか、どう持つか。
読者のみなさんも、ぜひリードの持ち方を再考なされることをおすすめいたします。警察のご厄介にならないためにもね。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
UP DATE