犬と暮らす
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「ウチのコ、人間の言葉がわかる」というのは本当か|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.71
今回は、「犬が本当に人の言葉の意味をちゃんと理解しているのか」に関するお話。テレビで犬が人の言葉を理解しているように振る舞う様子や、「ウチのコは人間の言葉がわかる」という人の言葉は、はたして本当でしょうか? 西川先生がとある有名な刑事ドラマをもとに検証します(編集部)
犯人は犬と被害者が一緒になるようにお膳立てをして、自身は遠く離れた別の場所にいて、電話で被害者にそのワードを口にするように誘導する。
現場には犬と被害者以外は誰もいない。となれば、結果として噛まれた人は死に至ってしまったが、犬が人を噛んだ事故(口咬事故)扱いに。殺人事件とはならないはず。そう犯人は考えていた。
そのカラクリを刑事が推理、暴き、事件を解決へと導く。
これ誰もが知っている海外の刑事ドラマの、とある回のお話。
さてこの話、「犬は人間の言葉を人間のように理解しているわけではなく、特定の音の響き(合図)の後にはどういった行動をしたらいいかを理解しているにすぎない」ということを、ストーリーの鍵にしているといえる。
ということで若干のネタバレはご勘弁願いつつ、今回は少しこの話をネタに。
「殺せ!」と命じても殺さない
で、試しに「殺せ!」という言葉を、犬たちに投げかけてみる。でも犬は無反応。
もちろん最終的には、刑事はその攻撃を誘発する合図を突き止める。その合図は、殺人とはまったく関連性のない言葉。
「犬は我々人間が理解する言葉の意味を、人間のように理解しているわけではない」「犬は言葉の本来の意味とは関係なしに、その言葉の音の響き(合図)の後にはどういった行動をしたらいいかを理解する」
脚本を書いた人はそのことをよく理解していて、興味深く思っていたのでしょうね。何せストーリーの鍵としたわけですから。

同じ合図で違う行動をとるように
犯人と対峙した刑事を、犯人は過去にトレーニングで教え込んだ殺しの合図を口にして、殺そうとする。
しかし、犬たちは刑事の顔を舐めるという行動をとるのです(この場面ツッコミどころが若干あるのですが……)。
特定の合図Aに反応して特定の行動Bを起こすようにトレーニングしていても、特定の合図Aに反応して別の行動Cを起こすように変えられる。
これまた、特定の合図Aが言葉であれば、その本来の人間が使っている言葉の意味など関係なく、犬は合図を理解するということです。
よく「うちの子は私の言っていること(会話)がちゃんとわかる」って、主張する飼い主がいますが、これ大きな勘違いってわかりますよね。
「オスワリ」の言葉の合図で座るようになった犬を、「座るな」という合図で座るようにもできるし、「ところてん」というワードで座るようにもできる。
犬は言葉の本来の意味を理解しているのではなく、特定の音の響き(合図)の後にはどういった行動をしたらいいかを理解しているにすぎない、そういうことなのです。

わかっているつもりで接することはストレス
私はアメリカ人に英語で話しかけられて、大してわかりもしないのに英語で返したら英語がわかると勘違いされて、その後すごいスピードで話しかけられ冷や汗だらだら……という経験があります。
わかっていないのに、わかっていることを前提でコニュニケーションを取られると、これって言われている方は大きなストレスになる(もっともこのケースは私が悪いわけですがね)。
犬は人間の言葉を人間のようには理解できない、ぜひともそれを理解して彼らとは接してあげてください、ということです。
えっと、ところでその刑事ドラマは何かって?
それを明かすと、若干のネタバレではすまなくなるので、そこはご勘弁を。是非ともご自身で、推理、解決を。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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