犬が好き
UP DATE
「オートマチック・シット」が向く犬と向かない犬|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.93
今回は、愛犬を家族の一員のようにかわいがるコンパニオン・ドッグと、ショーやドッグスポーツを本格的にやる犬では、しつけトレーニングの仕方が違うというお話。これを混同させるとしつけがうまくいかないと、西川先生が注意を促します。具体的にどんなことでしょうか(編集部)。
筋トレは、体作りのため、健康のためです。
そう、トレーニングはそれ自体が目的ではなく、手段ということ。
私が教室で伝えているのは、リビングでいっしょに過ごし、どこにでも連れて行き、楽しい時間を共有できる犬、コンパニオン・ドッグ(家庭犬)に育てるため、犬、人間双方の幸せ度をアップさせるトレーニングです。
トレーニングに限らず、食事や日頃気をつけることなども、どんな犬に育てたいか、その目的によって変わってきます。
時として目的が違えば、その手段としてのトレーニングの内容が、好ましいことも、逆に好ましくないということも生じます。
コンパニオン・ドッグとしては好ましい行動「オートマチック・シット」
入り口は、犬の鼻先に提示したフードを握り込んだグーの手を、飼い主の顎の下に持ってくるトレーニング。
飼い主を見上げる形を作るわけですが、「犬が西向きゃ尾は東」ではありませんが、「犬が上向きゃお尻は下がる」で、ほとんどの犬はやがて見上げながらお尻を床につけるようになります。
さらに見上げて歩くことを教えていくと、飼い主が立ち止まると、自動的に座るようにもなる。
扉の前でも、交差点でも、飼い主が止まると座って見上げる。
これ「オートマチック・シット」といって、コンパニオン・ドッグとしては好ましい行動とされています。
犬の安全も、飼い主の安全も担保できるからです。
オートマチック・シットは、目的によっては好ましくない
ドッグショーで高得点を得ようとする犬たちです。
ショーでは、胸を張り進行方向を向いたその立ち姿、前を向き歩いているときの姿が、評価されます。
ハンドラーを見て歩くことも、勝手に座ることも、プラスの点数には結びつかない。
ほかには、支配・服従関係が求められる、命令に従うことを目的としてトレーニングをされてきた犬たちです。
彼らは指示されたこと以外の行動を行うことを、よしとされていません。
座ることを命令されなければ、座ってはいけない。
トレーニングとは別の話ですが、ドッグショーで高得点を得ようとする犬たちは毛切れが起きないよう、首輪すら日常的にはつけないのが普通。去勢・避妊などもNGです。
クレートの中での興奮をよしとする犬たちもいる
クレートの中で大騒ぎするのはNGなわけですが、ドッグスポーツの世界ではその限りではありません。
アドレナリンを高めることが必要なドッグスポーツは、カーレースでスタート前にエンジンを吹かすように、時としてクレートの中で興奮を高めることも必要となります。
番犬も同様、コンパニオン・ドッグとは異なる。番犬にすることが目的なら、社会化はしない、好ましい行動をあまり教えない、どんどん叱ること。そうすることで不安傾向が高まり、警戒心が強くなり、立派な番犬となる。
社会化を十分に行い、好ましい行動をたくさん教え、叱ることを排除する、コンパニオン・ドッグに育てることを目的としたトレーニングは、番犬にするためには弊害となる。
さて、あなたが望むのは、どんな犬か。まずは目的を明確にすることです
コンパニオン・ドッグですか、それともそれ以外ですか?
目的を明確にしないとよく言う、二兎追うものは一兎も得ず、虻蜂取らず、なんて結果になってしまいますよ。
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
UP DATE