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犬に伝わる最強のほめ方「ほめ上手3点セット」|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.92
今回は、犬のほめ方に関するお話。西川先生が飼い主さんに「愛犬をほめてください」というと、皆さまざまなやり方をするそう。その際、飼い主さんに教える最強のほめ方「ほめ上手3点セット」をくわしく解説します。このほめ方を続けると、最終的にごほうびがなくてもほめられるようになりますよ(編集部)。
そうならないためには、という話を前回しましたが、前回の話、単純化するため実際のトレーニングで重要視しているある部分を、あえて省略していました。
それは、ほめ方に関してです。
好ましい行動に対してほめる。
ほめるとは好ましい行動の頻度を高めるために行っているわけですから、フードを与えることは、まさにイコールほめているということです。
しかしながら、フードを与えるしかほめる手段がなければ、突き詰めれば「フードの切れ目が縁の切れ目」となる心配を、完全には払拭できない。
ということで、実際のトレーニングでは、ほめ方に関してあるルールを設け、そのルールを守るようにします。
「ほめ言葉」と「フード」と「なでる」を、組み合わせる
ほめるとはいいことを起こすわけですから、フードを口にしないのであれば、フードを与えてほめる(いいことを起こす)ことができないからです。
フードを口にするのであれば、次にフードを提供する前に、ほめ言葉を必ず発してもらうようにします。
ほめ言葉→フード、これを繰り返すと、ほめ言葉を耳にすると喜ぶようになります(当コラムVol.84参照)。
さらに、フードを与えながらなでるようにアドバイスします。
実は多くの飼い主は、「ほめて」と言うと、まずはなでようと手を出します。
パピーたちは動くものを噛みつこうとする傾向が強いので(当コラムVol.86参照)、なでようとする手に歯を当ててきます。
初級クラスから参加してくる犬たちは、過去に飼い主に取っ捕まっている経験も多く(場合によっては叩かれていることも、押さえつけられていることも)、その手を避けようとしたりする。
噛んだり避けたりしないためにように、なでるときには、必ずフードを与えながら行うようアドバイスするわけです(フードを食べることと、手に噛みつくこと、避けることは、両立できませんからね)。
ほめ方に7つのバリエーションが生まれる
あの実験では、メトロノームを聴かせる(刺激を与える)タイミングによって、刺激に対する反応(唾液の分泌)が起きやすい、起きにくい(起きない)、そういったことも明らかにされています。
実験によれば、フードを与える直前にメトロノームを聴かせると反応(条件づけ)が進み、同時に聞かせることでもそこそこ反応が得られることが確認されているのです。
ということは、
①「ほめ言葉→フード+(フードを与えながら)なでる」を繰り返すと、
②「ほめ言葉→フード」、
③「フード+(フードを与えながら)なでる」の組み合わせ、
やがて④「ほめ言葉→なでる」の組み合わせ、
⑤「ほめ言葉」単独、
⑥「なでる」こと単独も。
もちろん、⑦「フード」は単独でいいことなわけですから、ほめ方(犬にいいことが起きたと感じさせられる)に7つのバリエーションが生まれ、そのうち3つはフードが必要ない、そうなるわけです。
ほめ言葉をかけ、ときどきフードをあげる
例えば、教室では飼い主に並んで歩く「ヒールウォーク」を、アイコンタクトを取りながら歩くことで、形にしていきます。
よく見上げるようになったら、毎回フードはあげずにほめ言葉でつないで、ときどきフードを提供するようにする。
これは、景品の引換券を毎回あげて、どこかでそれを景品と引き換えるようなもの。
するとどうなるか、犬はヒールウォークを意欲的に維持しようとするのです。
この例はヒールウォークというひとつの行動に対してですが、複数の行動をそれぞれ言葉でほめて、飼い主への犬の集中を維持させることも可能です。
私、駒沢スクールへは周辺のパーキングに車を置きそこから散歩がてらに犬たちと歩くのですが、フードを家に忘れてくるなんてことをときどきやらかします。
でも、交差点でのオスワリ・マテ、ヒールウォークでの他犬とのすれ違いなど、散歩中に必要なその他もろもろの好ましい行動は、ほめ言葉という景品引換券を与えるだけで維持できていくのです。
与えた引換券は教室についてからフードと交換、精算する。精算するフードの量に気を使う必要はありません。
犬は数を数えることが、幸いできないのです。
「おいおい、30回はほめ言葉を耳にしたぞ、30回分のフードがこれっぽっちかよ」と、文句をいうことは決してありませんのでね。
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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