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「ウチの犬は叱られるのがわかってやっている」は本当!?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.98

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
このコラムでは、犬を叱ることがいかによくないかを、さまざまな角度からお伝えしていますが、一方で「ウチの犬は叱られていることがわかる」「叱るとシュンとなって反省する」という話もよく聞かれます。愛犬が反省するような態度を見せたとき、何に対して叱られているかを理解し、本当に反省しているのでしょうか? 西川先生が科学的な見地から解説します(編集部)。

「叱られるのがわかっているのにやっている。だって、私が部屋に入ったら叱られると思って、隠れるから」。
いぬのきもちWEB MAGAZINEは、雑誌『いぬのきもち』の特集を元にWeb記事を制作し、
記事はYahoo!ニュースなどに配信することもあります。
少し前ですが、「犬を叱っても”決して通じない”4つの理由とは?」という記事(元となる本誌の特集は私が監修)が、Yahoo!ニュースにも配信されました。
冒頭の一文は、そのYahoo!ニュースに配信された記事に対してのユーザーコメントのひとつです(そのまま引用すると、何かと何が何なので若干のアレンジはしていますが)。

犬は人間の言葉を人間のように理解はできない(叱られた理由を伝えられない)、罰するのは即座でないと(3秒後に叱っても)効果がない、ゆえに叱ることは無意味、といったことは過去のコラムでも記していますのでそれらはそちらをご覧いただくとして、今回はこうした「叱られるのがわかっているのに、その行動をする」と、なぜ飼い主がカン違いしてしまうかを解説しましょう。

犬は状況判断ができる動物

我が家には、リビングから見える形でペット部屋があり、そのペット部屋にはドッグドアが備えてあります。
ドッグドアは、2重扉構造で手前の扉は取り外しができ、奥の扉は下部が前後するスイングドアのような作りをしています。
庭に出す際に手前の扉を外します。室内に戻ってきたら手前の扉を戻す。
手前の扉を戻すのを忘れていると、ダップはそれを知らせてくれます。
奥のスイングドアを内側から鼻で押して、パタパタ音をたてるのです(もちろんそうするように教えたのですが)。
ダップは手前の扉が外れたままか、そうでないかの状況の違いがわかり、外れたままのときには何をすればいいことが起きるかを理解しているわけです。

着替えをしてもお化粧をしてもなんら普段と変わらない、イヤリングをつけ始めると態度が一変する、そうした犬もいます。イヤリングをつける状況は、その後自分を残して飼い主がいなくなることを知っているからです。
朝方吠えることに悩まされる飼い主が少なくありませんが、なぜ吠えるかは普段と朝方のその状況の違いがわかるのです。
普段は吠えても無視される、しかし吠えると飼い主がかまってくれる状況が、朝にはある。
どういったときに何が起きるか、あるいはどういったときに何をすれば何が起きるか、こうしたことを犬は理解できる。そういうことなのです。
室内に戻っているのに、ドッグドアの内扉が外れたままだと、ダップは鼻で突いてカタカタ音をたてる
Can! Do! Pet Dog School

叱られる状況とそうでない状況

さて、室内におけるトイレ以外の排泄の話です。
「叱られるのがわかっているのにやっている。だって、私が部屋に入ったら叱られると思って、隠れるから」
これ、一部分は合っているともいえます。
彼らは、叱られる状況がわかるということです。
その状況とは、「トイレ以外の場所に排泄物がある」+「飼い主がその場に存在する」という組み合わせの状況です。
では、飼い主がその場に存在しない、「トイレ以外の場所に排泄物がある」だけの、状況はどうでしょう。
そのときは(飼い主が現れるまでは)、何も起きない状況です。
すなわち、彼らは叱られる状況(「トイレ以外の場所に排泄物がある」+「飼い主がその場に存在する」)そうでない、何も起きない状況(「トイレ以外の場所に排泄物がある」+「飼い主はその場には存在しない」)の違いを理解しているのです。

トイレ以外の場所に排泄をしても、その場に飼い主が現れるまでは叱られる状況にはならない。
しかし、そこに飼い主が現れた瞬間に、叱られる!大変だ!となるのです。
叱られない状況と叱られる状況、違いは飼い主がそこに存在するかどうか。トイレ以外での排泄という過去の行動と結びつけているわけではない
Can! Do! Pet Dog School

許しの態度をとる

他のユーザーコメントには、「許しの態度をとるのは、過去に悪いことをした自覚があるからではないか」、といったものもありました。
許しの態度とは、おそらくおなかを見せるポーズのことを言っているのでしょう。

こちらは、その態度を見せれば嫌なことがなくなる、すなわち飼い主から受けているストレスを軽減できる(叱られなくなる)ということを、それまでの経験で学んでいるにすぎません。過去に悪いことをした自覚があるわけではない、のです。

悪いことをしたと自覚があるのに、その悪いことを繰り返す。
もしこれ人間であれば、かなり悪質ですよね。
「叱られている理由はわかっている」ということは、今でも「叱っている」からそう思うのでしょう。でもコレ、叱ることには効果がないことを自ら証明している。

正しい行動を教えてあげましょう。
「叱られている理由がわかっている」と思っている限りは、正しい行動は教えられません。今まで教えることができなかったように、です。
あ、あと、ユーザーコメントには「叱っても通じないのは人間も同じようなもの」、というのもありました。
そのユーザーコメントに関してのお話は次回改めて……ということで。
おなかを見せることに関しては過去のコラムでも取り上げています。ぜひそちらも、ご一読
Can! Do! Pet Dog School
文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can! Do! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『子犬の育て方・しつけ』(新星出版社)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!トイプーぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(16才)、鉄三郎くん(12才)ともにオス/ミックス。
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