ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、東京地方裁判所で平成26年1月10日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
つながれていた犬に突然噛みつかれた
ある日の夜、Aさんは知人との待ち合わせのため、愛犬のボストン・テリアを連れて、駅前のレンタルビデオ店に向かいました。店前の歩道にはシベリアン・ハスキー(以下ハスキー)が繋がれており、その飼い主であるBさんは、店内で用事を済ませている最中でした。
店前には、つながれているハスキーを興味深そうに見ている通行人の少女もいました。彼女がAさんの愛犬も見たがったため、Aさんが少女に愛犬を見せようと近づくと、近くにいたハスキーが突然Aさんの愛犬の頭に噛みつき、愛犬を庇おうとしたAさんも左手を噛まれてしまいました。愛犬を噛まれてケガさせられたうえに、自身も左手を10針縫うほどのケガを負ったAさんは、損害賠償をもとめて、ハスキーの飼い主であるBさんを訴えました。
Aさんも注意不足で過失があるとされた
Bさんは裁判で「Aさんの愛犬が自分の犬を先に噛んだ」と主張しましたが、通行人の少女の父親の証言から、これは認められませんでした。いっぽうで、Bさんが人通りの多い場所に、大型犬をリードで結びつけただけの状態にしてその場を離れたことの管理不足が強く問われ、損害賠償等としてAさんへの約150万の支払いが認められました。しかし、一般的に見知らぬ犬同士が出会うと、興奮した犬が思わぬ行動に出ることもあるため、「Aさんもほかの犬に近づくときにはもっと注意を払うべきだった」と過失が認められました。その結果、Aさんの過失分として約3割が差し引かれ、約105万円に減額されました。
判決は……Aさんにも過失があるとして3割減額された
愛犬を連れて行動するときは、飼い主さんには愛犬の行動を管理する責任が強くもとめられます。今回のケースのように、ほかの犬に愛犬を近づける場合は、愛犬だけでなく、相手の犬の状況もよく見て、細心の注意を払いましょう。
参考/『いぬのきもち』2020年1月号「犬の事件簿 ホントにあった事件編」(監修:弁護士 渋谷寛先生)
イラスト/宮田翔
文/影山エマ