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結局、叱らないで育てるにはどうすればいいのか①|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.108
「犬を叱るしつけはNG」と、このコラムでもたびたびお伝えしていますが、「イケナイことをしているのに叱らなかったら、代わりにどうすればいいの?」「叱らないとやめさせられないから、させ放題になってしまうのでは?」と疑問の声が寄せられることがあります。今回は、西川先生がその疑問に答えます(編集部)。
実のところ何をすればいいかの記事は、具体的な問題を取り上げて「いぬのきもちWEB MAGAZINE内」の過去のコラムで、いくつもお話ししています。
他サイトを通じて配信記事をご覧になる方は単発で記事をご覧になっているので、まぁ致し方ないと思うところです。
ただ、編集から「何をすればいいかの記事を今一度」という意見もございまして、今回は「叱らない代わりにどうすればいいか」を改めてお話していきましょう。
一点あらかじめ申し上げておきますが、叱りたくなる行動を叱らない方法で改善するアプローチはその具体的な事象によって異なる、ということをご理解いただきたい。
その具体的な事象を次々に取り上げていくとなれば、1冊の本になってしまいますので(実際一冊の本にしています)、今回は土台となる基本の考え方を述べていくことにいたしましょう。
もっとも1回で説明しきれる感じはしませんが。
3つの原理・原則をまず理解する
当連載をご覧の方にはすでにお伝えしていますが、初めての方もおられるかと思いますので、それを記します。
3つの原理・原則とは、以下のごとく、です。
①犬は体験を学習していく
②犬は4つのパターンに基づいて学習をしていく
ⓐ:結果的にいいことが起きた行動を習慣化していく
ⓑ:結果的に嫌なことが起きた行動は取らなくなる
Ⓒ:結果的にいいことが起きない行動は取らなくなる
ⓓ:結果的に嫌なことがなくなる行動を習慣化していく
③犬は前触れを理解する(何かの後に何が起きるか、何かの後に何をすれば何が起きるか、を理解できる)
叱ることは②-ⓑですが、条件が揃わないとそれが成立しないこと、さらに条件が成立したとしても弊害が生じるリスクがあることがわかっている。よって叱ることで②-ⓑを使うことはしない、ということです。
もっともあま噛み対策に不可欠な「苦味スプレー」は②-ⓑを期待しています。
すなわち②-ⓑそのものはまったく使わないわけではないのですが、叱るという意味では使わない、ということです。
行動の習慣化は、脳にその回路が出来上がっていくということ
体験をすればするほど、その回路か強くなり早く反応していくようになる。
逆に体験できなければ習慣化のしようがない。習慣化した行動も体験できなければ、その回路は脆弱になり、反応が弱くなっていく。
人間は体験せずとも言葉を通じて学習できますが、同じ行動を繰り返し行うことでその行動が得意になり、その行動を繰り返し行わなければその行動が下手になっていくのは、他の動物と同じです。
勉強だって、スポーツだって、仕事のスキルだってそう。
さて、「叱らない代わりにどうすればいいか」を理解するため重要なのはまずこれ、「困った行動は体験させない」です。
すなわち、パピーであればこれから習慣化させたくないことは体験させないこと、すでに成犬となり習慣化している行動もしかり、体験させないことをまず考える。
体験できなければ習慣化しようがない、習慣化した行動も体験しなければ忘れていく、そういうことです。
習慣化は②-ⓐによるものなのか、②-ⓓによるものなのかを見極める
同時にやることがあります。
習慣化している行動、これから習慣化していく行動が、②-ⓐによるものなのか、②-ⓓによるものなのか、そのいずれかを見極めることです。
そして、いいことが起きているから習慣化している(習慣化する)行動に対しては、その行動に対していいことを起こさないこと、加えて別の好ましい行動でいいことが起きることを伝えること、あるいはその行動を防げる好ましい行動を教えること。
嫌なことがなくなるから習慣化している(習慣化する)行動に対しては、その嫌なことに慣らすこと、その行動を防げる(その行動が起きない)好ましい行動を教えること、です。
具体的には……
って、それは大人の事情(文字数の関係)で次回に持ち越さざるを得ませんね。
ということで、やっぱり1回では終わらなかったでしょ(って、2回でも終わるのかも疑問)。
西川文二氏 プロフィール
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