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大型犬のしつけはプロに習うのが常識だったのに、なぜ変わったのか|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.136
西川先生によると、コロナ禍で犬を飼う人が増え、大型犬の数も増えたそう。昔は大型犬を飼ったらしつけをプロに習うのが常識でしたが、今はそうする人が少ないとか。なぜなのでしょうか?(編集部)
そうした主旨の問いに答える調査の結果(うちうちの調査で未公開)を、過去に何回か聞いたことがあります。
対象も、サンプル数も異なる、別々のアンケート結果なので、単純比較はできないのですが、2000年前半から2010年前半までの流れでは、6%→3%→1%と減っていったということを記憶しています。
犬の飼育頭数は、リーマンショック前後までは右肩上がりでしたが、プロに犬のトレーニングの手ほどき受けたことがある飼い主の比率は減っていった。
それはなぜなのか?
もちろんそこには理由があります。
大型犬はプロの学ぶ、かつてはそれが常識だった
90年代初頭、バブル末期にゴールデン・レトリーバー(以下ゴールデン)のブームがあり、当時は訓練所に預けるのが常識だったが、その方法ではイメージしたコンパニオン・ドッグにならないことがわかり、家庭犬しつけインストラクターの養成をJAHA(公益社団法人日本動物病院協会)が始めたことは、過去に記した通りです。
訓練所に預けなくとも大型犬にはプロの手ほどきによるトレーニングが不可欠。そうした考えは、2000年の初頭ごろまでは、ある意味常識でした。
私の教室の話をすれば、当時ひとつのクラスに数頭のラブラドール・レトリーバー(以下ラブ)がいたこともありました。2001年〜2002年にはラブのブームがあったからです。
コンパニオン・ドッグに育てたい。訓練所に預けることではその願いは叶わないが、コンパニオン・ドッグに育てるためには、何かしらのプロの手ほどきによるトレーニングは必要。それが常識だったのです。
減っていく大型犬の比率
ペット可の集合住宅が増えることで、犬の飼育頭数は増えていった。ただペット可の集合住宅には、廊下やエレベーター、エントランスなど、共有スペースは抱いて移動するといった規約が、必ずある。
たとえ大きさの制限が設けられていなくとも、必然的に大型犬は飼えないことになります。
犬の飼育頭数全体は増えたといっても、それは小型犬の数が増えていったということ。結果、大型犬の比率は逆に減っていったのです。
大型犬の比率が減っていけば、必然的にプロに学ぶ人の比率は減っていく(番犬が主流の時代は、大型犬以外はプロに学ぶ必要がなかった)。当然の帰結となるわけです。
コンパニオン・ドッグを望むならトレーニングは不可欠
大型犬の比率ばかりか絶対数も、減っていきます。いつしか、大型犬を飼うのならプロの手ほどきによるトレーニングは不可欠、といった常識も忘れ去られていったようです。
なんでこんな話を今回しているかいうと、かなり困った状態で相談に来る大型犬の飼い主が増えていると最近感じるからです。
リビングでまったり過ごし、どこにでも連れていける、楽しい時間を共有できる、そうした犬に育てるためには、社会化を中心にしたパピーの時期からのトレーニングは不可欠です。大型犬だからという話ではないのですが、大型犬には絶対的に不可欠なのです。
引っ張り、飛びつき、この2点だけ取り上げても、飼い主、及び周囲が、大型犬の場合は危険を伴うこととなるからです。
大型犬にはプロの手ほどきによるトレーニングが不可欠、そうした常識がいつしか忘れ去られ、そんななか、コロナ禍で犬を飼い始める人が増え大型犬も増えてきた。
大型犬の場合は特に、成長に従い危険すら伴う問題が次々と顕著化してくる。そこで慌ててプロに相談する。まぁ、そういうことなのでしょう。
え? 大型犬を飼い始めたけど、プロの手ほどきによるトレーニングのことは考えていない? トレーニングを始めるのはまだまだ先と考えていた?
いえいえ、今日からでもプロに犬のトレーニングのてほどきを受けるべきですよ(訓練士ではなく家庭犬のインストラクターにですが)。
まぁ悪いことは言いませんから。
西川文二氏 プロフィール
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