犬と暮らす
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順番が逆? 困る前にしつけを学ぶ飼い主さんが増えない理由|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.137
犬たちが人間社会で幸せに暮らすために、プロに習うしつけのトレーニングの重要性をお伝えしていますが、プロに習う人が増えないのはなぜでしょうか。西川先生は「飼い主さんだけが悪いわけではない」といいます。その理由とは……?(編集部)
若い人たちは知らないかもしれません。バブル崩壊でいわば倒産する結果となった、ある証券会社の社長の言葉です。
またまた、何の話を始めたのだと思うかもしれませんが、まぁ聞いてください。
(今回も犬に関係する話へと展開していきますから)
大型犬を迎え入れたら、犬のトレーニングのプロの手ほどきを受ける。
かつてはそれが常識だったが、最近はその常識が薄れ困ってからプロの指導を仰ぐようになっている。
前回、そんな話をしたわけですが、困ってからプロの指導を仰ぐのは大型犬に限りません。
将来困らないように行うのが、しつけ(トレーニング)です。しかしながら困ってから相談に訪れる方が、サイズに関係なく多い。
何かがよろしくない。さて、何がいけないのでしょうか?
飼い主だけが悪いともいえない
外飼い主体、番犬主体の時代はそれでよかったが、リビングでともに過ごし、お買い物にもお出かけにも連れていき、多くの人からかわいがられ楽しい時間を共有できる犬、コンパニオン・ドッグに育てていくには、犬のサイズにかかわらずトレーニングは不可欠。
しかしながらこのことを、多くの飼い主たちは知りません。
特に、困ってから相談に訪れる飼い主たちは。
知らないのだから、仕方がないと言えば仕方がない。すなわち、飼い主は悪くないとも、言えるのです。では誰がよろしくないのか?
「私らが悪いんです。社員は悪くございません‼︎」
冒頭のこの言葉を借りるとすれば、「私らが悪いんです。飼い主は悪くございません‼︎」なのです。
私らとは誰か
証券会社の社長の私らとは、経営陣を指しています。
「私らが悪いんです。飼い主は悪くございません‼︎」の場合の、私らとは、飼い主にアドバイスができる立場にいる私たちです。
家庭犬しつけインストラクターしかり、犬の販売に携わっている人たちしかり、動物病院スタッフしかり。
ただ、家庭犬しつけインストラクター、動物病院スタッフの2者が飼い主と接点をもつのは、飼い主が犬を飼い始めてしばらく経ってからとなります。
「まだ小さいんですけども……」と、私の教室に問い合わせをしてくる飼い主は、早くても生後4カ月を迎えようとしている場合が多いのです。
動物病院を訪れるのも最近は3回目のワクチン接種からというケースが増えていて(2回目のワクチンまではショップで面倒を見ることが多い)、これまた多くが生後4カ月を迎えようかという時期に、なってしまっているのです。
コンパニオン・ドッグに育てていくためには、社会化期からのトレーニングが重要となります。社会化期は生後3週齢から生後4カ月齢ごろまで。
残念ながら、家庭犬しつけインストラクター、動物病院スタッフが、飼い主と接点をもつのは、社会化期が終焉を迎えようとしている時期となってしまっているわけです。
そうは言っても、やっぱり飼い主も
コンパニオン・ドッグに育てていきたいので、そのノウハウを知りたいと、なかには子犬が家にやってくる前から話を聞きに来る飼い主(飼い主候補?)もいるのです。
このコラムもそうですが昔と違い「コンパニオン・ドッグに育てるためには、何をどう教え、何をすべきかいけないか」を提供している場も、ちゃんとあります。
そうした情報をちゃんと自ら手に入れる飼い主もいるということです。
「無知は罪」とも言います。
自らそうした情報を手に入れる努力を、飼い主はもっとすべきかとも思う次第です。
もちろん「私らが悪いんです」の私らには、私も入っているわけで、「コンパニオン・ドッグに育てていくには、犬のサイズにかかわらずトレーニングは不可欠」「それも社会化期からの」、ということを伝える努力がまだまだ足りない。
先程述べたように、このコラムはそのことを広めるひとつの手段でもある。
ということで、ぜひとも当コラム存在の拡散をどうかひとつ、お願いいたします。
西川文二氏 プロフィール
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