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接し方で犬は変わる、はず【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

福助を見ていて、たまに無防備すぎないか? と思う。ヘソ天で寝るのはいつものことだし、うどん粉のようにこねてもされるがまま。体中どこを触られてもまったく嫌がらない。

警戒心ゼロの福助

それに対して、大吉がへそ天で寝ることは滅多にないし、雑になでるとどこかへ行くし、前足を触られるのを嫌がる。たとえ嫌でも爪を切るときなど、必要があるときはあきらめてくれるから問題はないのだが、多少嫌がることがあるくらいの方が普通だと思う。むしろ、福助の警戒心のなさが珍しい。
とはいえ、昔からこうだったわけではない。信じられないかもしれないが、わが家に迎えた当初は、抱き上げることすらできなかった。たぶん、千葉の田舎で放浪しているところを保健所の職員に捕獲されたときの恐怖(※)がトラウマになっていたのだろう。

(※)職員さんが悪いわけではありません。
近寄ると逃げる。抱き上げよう手を差し伸べると、本気でかむ。そんな子犬だった(大吉のことだけは大好き)。実際に保健所でも職員さんをかんだらしい。 保健所から福助を引き出した保護団体の一時預かりさんからも「強引に抱き上げようしないでくださいね」と注意されていた。
だから、迎えた当初は腫れ物に触るように接していたが、2週間くらいでなんだか面倒くさくなった。そもそも攻撃する意図など一切ないのだ。それに、触れないままと健康チェックなどいろいろ困ることもある。そこで、かみたかったらかめよ、と方向転換した。それでも子犬の歯は尖っているので、血が出たりもしたが、おかまいなしで接していた。

根は悪くない…はず

そうこうしているうちに福助の表情も次第に怯えが消えていき「あれ、もしかしてこいつ敵じゃないのか?」から「敵じゃないんだ」になり、「抵抗してもむだだ」と変わっていった。
洗った後のドライヤーについても同じだった。当初は「なんだこの風の出る得体の知れない物体は!」と逃げまくっていたのを、その都度捕まえてはドライヤーをかけているうちに、「あれ、なんか心地いいかも」になり、「よきに計らえ」とウトウトするようになった。同時にどんどん丸くなっていった。
でも根はもともとこういうおおらかな性格で、恐怖体験から人間不信になっていただけかもしれない。ただ、動物病院ではいまだに抵抗しまくるし、獣医師に耳の中は見せようとしないので、誰にでも心を開いているわけではないようだが。
怯えた子犬に接したことなどなかったから知らなかったが、犬は接し方でここまで変わるとは思っていなかった。最近インスタグラムにも動画をアップしたが、今では爪切りされながら寝るほどである。そこまで心を許してくれているのは嬉しいが、犬としてどうなのかとも思う。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
ツイッター
インスタグラム

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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