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犬のために変わったこと【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

人には好き嫌いがあり、自ら率先してやることもあれば、必要に迫られて仕方なくやること、お金ももらってもやりたくないことがある。他人のことは関係ない。あくまでも「自分基準」であり、若いころからあまり変わらない。ただ、中にはあれだけ嫌っていたのに、いつの間にか好きになっていることもある。たとえば、ゴルフなんて絶対やらないと言っていた人が、今ではゴルフを楽しんでいるように。

私がやりたくないこと

私のケースでいえば、お金をもらってもやりたくないのはジョギングである。というより、スポーツ全般といった方がいいかもしれない。ようするに、若いころから体を動かすことが嫌いなのだ。「いい汗かいた」という喜びは感じない。なんで疲れることをわざわざやるんだよ、というひねくれた少年だったのだ。
それでも小学校・中学校と少年野球やサッカー部に入っていたことはあるが、当時は何か部活をしなければいけない風潮だったからやっていただけで、「将来プロになりたい」と憧れたことは一度もない。高校になると部活なんて一切やらず、部屋でひとり音楽を聴いたりギターを弾いていたタイプである(それ以外はバイト)。
そんな性分のまま生きてきたが、すっかり変わったこともある。ジョギングやスポーツは今でもやらないが、40歳を過ぎてから草刈りだけは頑張るようになったのだ。やったことがない人は知らないと思うが、草刈りはむちゃくちゃ疲れる。それこそ全身汗だくになる。若いころの私が毛嫌いしていた、体を動かすことの部類だ。
それが今では、自らの使命のごとくやっている。山の家に行く度に、自作で作ったドッグランを維持するため草刈り機を使ったり、それではキリがないからクマザサやタンポポを根ごと抜いたり、むき出しになった土をカバーするため、両肩にかついだウッドチップを何往復もして運んだり。
さらには、いくら根を抜いてもまた生えてくるクマザサ対策で、51歳でクワデビューし、耕したところにクローバーや芝の種を撒いてドッグランの緑化計画を進めたりしている。

愛犬のためと変わっていったこと

この前ふと思ったが、大阪の庄内という下町で生まれ育った私は、草刈りなど無縁だったし、植物を育てるようになるなんて、想像もできなかったことである。庭仕事はものすごく汚れるので、作業着も買い、見事にドロドロになりながら作業している。
別にそんなこと好きでもないし、お金をもらってもやりたくないのだが、なぜか率先してやっている。それはひとえに大吉と福助のためである。少しでも彼らが快適に走り回れるように、足が泥だらけにならないように。そのためだけにやっている。
草刈り機を2台も買ったり(チップソー用とナイロン用)、せっせと柵を設置したり、私の労力まで考えれば費用対効果はどうなのか、と思うがそんなことはどうでもいい。
ただただ、大福が楽しそうに走る姿を見られればそれでいいのだ。草刈りをして、クワで耕して、汗だくになり、ヘトヘトになりながら、あろうことか「あぁ、いい汗かいた」と思ったりする。これはすごい変化だと思う。
というように、犬と暮らす人はみな、以前と比べて自分の中で何か変わったことがあるのではないかと思う。おそるべし、犬の魔力。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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