1. トップ
  2. 犬が好き
  3. 連載
  4. 穴澤賢の犬のはなし
  5. 犬の観察力【穴澤賢の犬のはなし】

犬が好き

UP DATE

犬の観察力【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

大吉と福助を見ていると、「人っぽい」と思うことがある。擬人化しているわけではない。つまらないと露骨に顔に出たり(意図的に出したり)、あくびをしたり、要求があったら目で訴えてきたり。そういうしぐさが妙に人っぽく感じるのだ。

飼い主との距離が関係している?

その点については、実家にいた犬とは大きく違う。子どものころから家にはずっと犬がいたが、居場所は玄関の犬小屋だった(親が家にあげるのを許さなかったため)。彼らは散歩に行くときは大喜びで、ゴハンをもらうのを楽しみにしていた。一緒に遊んだりしたときに楽しそうなのは見て分かったが、それ以外の感情は読み取れなかった。私の接し方が今とは違ったのも原因かもしれないが、距離が関係しているのではないかと思う。
というのは、犬と接するのはほぼ玄関のみで、それ以外は別々に行動していたからだ。犬もその状況を受け入れていた気がする。特に不満そうにしていた記憶はない。
いっぽう、大人になってから初めての犬「富士丸」、そして現在の大吉と福助は家にあげるのはもちろん、ベッドでもソファーでもどこでも自由に暮らしている(特に富士丸のころは狭い1DKだったので文字通り肩を寄せ合うように暮らしていた)。
そうなると、必然的に四六時中一緒にいることになる。つまり、昔に比べて犬との距離が近いのだ。そんな中で、彼らは人間の行動を観察する。そして行動パターンを予測し、表情から感情を読み取り、自分の態度に対するリアクションから、「こうすれば伝わる」と意思の伝え方を学習していったのではないかと思う。

飼い主はよく観察されている

予測に関して、たとえば大福と出かけるときはいつも一眼レフカメラを持っていくが、私がバッテリーをバッグに入れると「もしかして、出かける??」と色めき立つ。
感情や気分に関しては、私が仕事に集中しているときはなぜか大人しく昼寝していて、息抜きにネットサーフィンをしているときは、大吉がトコトコとそばに来て「暇だったらなでて」と訴えてきたりする。なぜ背後から、位置的にパソコンのモニターは見えないはずなのに、私がネットを見ていたのが分かったのか、いつも不思議に思う。
意思の伝え方としては、前足でちょんちょんすることから、表情や目の使い方を何通りも使い分けて、要求を伝えてくる。たとえば、おなかを壊してもよおしたときは、こちらを見るその目を見ただけでなぜか「お、やばいのか」と分かる。
これは長年一緒に暮らしているからこその意思疎通といえばそうかもしれないが、子どもの頃に家にいた犬たちとはこういう関係ではなかったし、訴えもしなかった気がする。
普段暮らしていて、ふと振り返ると大福がこちらをさりげなく見ていたりすることがある。きっと観察されているんだろう。まったり昼寝しているようで、実はさりげなく何をしているのか見られている。
だから、私がその日の仕事を終えた瞬間にすっと立ち上がったり、ビールを飲もうと冷蔵庫に向かったときに「オヤツ?」となったり(そういうルールにされている)、「さて、そろそろ寝ようかな」と思うとさっさと寝室に行ったり、「なんで分かったの?」と思うことが日常の中で多々ある。きっと犬と暮らしている人は、思い当たる節があるのではないだろうか。きっと、振り返ると……。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
ツイッター
インスタグラム

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
楽天ブックス
「犬の笑顔が見たいから」(世界文化社)楽天ブックス
CATEGORY   犬が好き

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「犬が好き」の新着記事

新着記事をもっと見る