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犬がいないとつまらない 年齢だけであきらめるのはまだ早い【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

今、1人でこれを書いている。大吉と福助は、家にいない。先月くらいから、妻が大福を連れて実家に帰っているからだ。揉めたわけではなく、妻の両親の体調の問題で何かと手伝いが必要なのと、私がイベントや出張などで終日留守にする日があったので、大福を連れて行ってもらったのだ。ちょくちょく帰っては来るが、数日いたらまた実家に戻るということを繰り返しているので、1週間ほど1人暮らしの状態が断片的に続いている。

犬のいない暮らしはつまらない

この連載でも書いたように似たようなことはあったから分かってはいたが、犬がいない暮らしは、つまらない。頭では分かっているのだが、体に染み付いているから、朝起きて「あ、散歩行かなくていいんだ」とか、出先で「あ、慌てて帰る必要ないんだ」とか、いちいち思ってしまう。
家の中はガランとしていて、なんとなく空気も違うし、生活リズムの一部がなくなるから時間も妙に余る。日々の仕事は変わらずしているが、なんとなく暇で、つまらない。
数日間犬たちがいないだけで、なぜこんなにつまらなく感じるんだろう。そう考えてみて、「あぁ、必要とされてないからか」と思った。大福といると、散歩やごはんや水など、必ずやらないといけないことがある。
それ以外にも「遊ぼうぜ」だったり、毎晩ビールをプシュッと開けたときの「いつものオヤツくれるよね?」という謎ルールの催促。そんなあれこれで、なんとなく私が必要とされている。こんな私でも……。そういう実感がなくなるからだ。誰かに必要とされていることを感じさせてくれる最も身近な存在。それが私の場合は彼らなのだろう。

喪失感と必要されること

犬や猫と暮らしたことのある人は、この感覚が分かるのではないかと思う。幸いにして、大福はまた戻ってくる。だから一時的なことだとやり過ごせる。けれど、犬が本当にこの世からいなくなってしまった場合、この感覚が続くことになる。そこにものすごい喪失感も加わる。
富士丸のときがそうだったが、表では普通の顔もできるし暮らせるけど、その奥にある誰にも言えない、分かってもらいたいとも思わない、あの底の見えない孤独感を思い出す。それは月日の流れと共に少しずつ薄らいでいくが、「何かが足りない」という意識は残る。
イベントなどで会う人と話していると、以前は犬(猫)と暮らしていたけど、もう年齢的に諦めたという話を結構な頻度で聞く。年齢的にといっても、見た目は私の少し上くらい、60才いくかいかなかくらいの人がそう言う。たしかに60才すぎてラブラドールなど大型犬のパピーを迎えるのは体力的にきついが、中型犬や成犬譲渡であればまだ全然大丈夫だと思う。

犬との暮らしをあきらめたくない

けれど、多くの保護団体は年齢制限がある。60才以上というだけで、譲渡対象から弾かれることもある。それ以外の条件も厳しい。それに対して「なんて失礼な」と怒る人もいるが、他のサイトで書いたように、厳しいのは保護団体なりの理由がある。そこは理解してほしいと思うが、年齢だけで門前払いされるのも、それはそれで悲しい。
もし年齢だけであきらめている人がいれば、そうではない保護団体もあることを知って欲しい。たとえばNPO法人『 Pawpads 』(神奈川県)は、年齢だけで却下はしない。かといって、誰でもいいというわけではない。3月に私が主催した『 イベント』で譲渡会を開いてもらったときに代表の濱さんと話したが、「責任を持って面倒を見てくださるだろうという方に譲渡したいので、そのための面談などはあります」と話されていた。年齢だけであきらめている方は1度相談してみてはいかがだろうか。
もう1つ方法がある。それは保護団体の一時預かりボランティアをすることだ。そうすれば、犬(猫)と暮らせる。正式譲渡されれば別れることになるが、それでもまた次の犬を預かればいい。少なくとも犬がいない生活よりはいいのではないだろうか。
犬がいればなんでもいい、というわけでもない。どんな犬でも、先代犬の穴を埋めることはできない。いつまでも特別な存在として心に残る。でも新たな犬は、いつの間にかまた別の特別な存在になる。大福がそうなっているように。一時預かりだとしても、その犬との記憶は残るだろう。
私もこの先、年齢的にも体力的にも犬の一生まるごと全部責任を持つ自信が持てなくなったら、一時預かりボランティアでもしようかなとぼんやり考えている。犬がいないと、つまらないから。
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