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犬に変えられた私の現状【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

今年(2023)の春から、種蒔きと水やりに励んでいた。山の家のドッグランを芝生にしたいからだ。なぜ芝生にしたいのかというと、大吉と福助の足が泥まみれになるからだ。特に雨が降った後に走り回られると、家に入る前にバケツに水をくんでそこでバシャバシャ洗わないといけないくらい泥まみれになる。それをなんとかしたい。芝生になればそんなこともなくなるだろう、と考えたのだ。

芝を育ててみる

まず最初は、ホームセンターで芝が切り売りされていて、1束10枚で500円くらいだったから、9束ほど買って敷いてみた。それでは全然足りないなと、翌日5束ほど追加したが、どう考えてもドッグラン全体に敷き詰めるのは無理がある。
それは最初から分かっていたが、切り売りのものを敷くのと、種を蒔いて育てるのはどれくらい違うのか、比べて見てみたかったのだ。
というわけで、切り売りを敷いた場所以外はクワで耕して、西洋芝の種を買ってきて辺り一面にぶちまけてみた。次に、切り売り芝とドッグラン全体に毎朝、毎夕水をたっぷりまく。これが結構時間がかかり、全体の土にほどよく水を染み込ませようとすると最低30分はかかる。それを山の家にいるときは朝と夕方、2回やる。

ドッグラン作りで生じた自身の変化

そうして5月になった頃、うっすら芽が出始めた。だからさらに水をやると、数日であちこちから芽が出てきた。そんな芽たちがなんだか愛おしくなり、早く成長しろよと思いながらたっぷり水をやる。
こんなことは50年生きてきて、初めての経験だ。大阪の庄内という中学生がパンチパーマをかけているような地域で生まれ育ち(当時)、自然や植物には一切興味がなく触れ合うこともなく、部屋にこもって音楽を聴いたりギターを弾いていた人間が、まさかこうなるとは。
ちなみに、ここまでの道のりも結構ある。まず、2017年にボロボロの山の家を手に入れ、300坪あるならとドッグランを作ることにした。そのために草刈り機デビューし、生え放題の雑草を刈り、柵で囲った。土がむき出しだと、足がドロドロになるという理由で、ウッドチップを安く譲ってもらい、それを担いでせっせとドッグランへ運び、全体にまいてみた。
しかし、土の上にまいたウッドチップは、1年もするとどんどん土と同化していくことを知った。そんな経緯を経て、今回の芝生計画になったのである。
私はこれらすべてに元々まったく興味がなく、すべては大吉と福助のためにやったことだ。今でこそドッグランっぽくはなっているが、最初はクマザサだらけで、今でもドッグランから一歩外に出ればこんな状態である。ここから、現状まで頑張ったのだ。
これを見て、「すごい。私には絶対できない」と思っているそこのあなたに言っておきたい。大丈夫、私だってやれる気がしなかったし、犬と暮らすまではそんなことしたいと思ったこともなかった。
それが大吉と福助によって変えられ、今では作業着を着て草刈りしたり、土を耕したり、芽吹いた芝を愛おしくさえ感じるようになっている。改めて考えるとすごいことだ。犬というのは、なんと恐ろしい魔力を持つのか。
犬と暮せば、きっとあなたもこうなると思う。私はこんな芝生を目指して頑張る。
(ここは近くの八ヶ岳農場 直売所)



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
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大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
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