大福の健康のため
退院してしばらく経ったので、大吉と福助を病院に連れて行った。特に何の問題もないのだが、フィラリアなどの薬をまとめて出してもらわず、2カ月に1度くらいの頻度で行くついでに、触診してもらうことしている。
一緒に暮らしている中で異変があればわかるはずだが、獣医師に診てもらうことで、より早く気づけるかもしれないと思っているからだ。それ以外にも、年に1度は血液検査を受けるようにして異常がないか気をつけている。
そうはいっても、本人たちはかなり嫌そうだ。出かけるときこそ「やった!」という顔をして車に飛び乗るが(気付いていないので)、動物病院の駐車場に着く頃には顔色が曇り、診察室へ入るときには沈みきった表情になり、踏ん張って最後の抵抗をする。
そんなに嫌なことをされた記憶はないはずなのだが、診療中は終始「この世の終わり」のような顔をしている。獣医師に触られるときも大吉は観念しているが、福助は本気で嫌がり診察台から飛び降りようとする始末。そこをなだめすかしつつ診療してもらうのだが、終わると一刻も早く動物病院から逃げ帰ろうとする。
帰りの車に乗ると「あぁ〜、災難だった!」という態度をしている。「何がそんなに嫌なんだお前ら」と思うが、彼らには彼らの言い分もあるのだろう。どんなに嫌であっても、また連れて行くが。それでもし何か異常が見つかったら、できることは何でもしてやるから。ただ、それには自分も健康でないといけないのだろう。
ついつい後回しになるが、今回の自分のけがのことで、改めてそう感じた。ちなみに、退院後も月に1度はCT検診があり、朝夕はてんかん予防の薬を飲むようにと処方されていた。それが5月の検診で薬は飲まなくてよくなり、先日の6月の検診では血液にも脳にも異常がないので、もう来月以降は来なくていいと言われた。とりあえず、復活できたかなと思う。
プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。
ブログ「Another Days」
大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雪と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。
福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。