ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。
今回は、保護犬のトレーニングを介して若者の自立支援を行うNPO法人キドックス。2022年に広大な敷地に移転し、さらに進化した活動内容について紹介します。
犬と人双方の幸せを目指して、さまざまな支援が行える施設をリニューアルオープン
引きこもりや登校拒否などの悩みをもつ若者の自立を、保護犬のトレーニングを介して支援しているNPO法人キドックス(『いぬのきもち』2020年2月号にて紹介)。2012年に開設された「キドックスファーム」は、茨城県土浦市にある古い家屋を改築して、保護犬と若者たち双方を助ける施設として運営していました。その後、設立から10年たった2022年4月、キドックスはつくば市の広大な敷地に移転。「ヒューマンアニマルコミュニティセンターキドックス」として、活動の幅を広げてリニューアルオープンしました。今回は、その新たな取り組みについて紹介します。
社会で生きづらさを抱える若者と心に傷を負った保護犬との絆が、大きな一歩を生み出す
「最初に『キドックスファーム』を立ち上げたきっかけは、社会で生きづらさを抱える若者たちと、飼育放棄などによって行き場を失った保護犬たち双方を助ける活動ができれば……という強い思いからでした。その趣旨をベースにして今回、より多くの保護犬が救えるようシェルターを増設し、また、若者の支援ほか、地域の子どもたちや犬と暮らす人々の悩みなどにも応えられるコミュニティセンターのような場をつくりたいと思いました」と代表の上山琴美さんは話します。
キドックスのベースはアメリカの更生プログラム
上山さんは高校時代から、保護犬を助ける活動に携わっていました。そんななか、仲のよい友人が非行に走ってしまい、登校しなくなるほどになったとき、上山さんは『何か自分にできることはないのか』と真剣に考え
たそうです。
「ちょうどそのとき、『プロジェクト・プーチ』というアメリカで行われている青少年を対象にした矯正プログラムを知ったんです。それは、少年院などに収容されている青少年が、保護犬を一からトレーニングして、譲渡できるようになるまでお世話をするというものでした。これを日本でもやってみよう!というのが始まりです」
その後、上山さんはアメリカまで渡って、矯正施設の視察を行い、プログラムの設立者からも多くのアドバイスをもらって念願の「キドックスファーム」の開設を果たしました。
「今回、より大きな施設に移転するにあたって、キドックスの活動に賛同する方々から寄付を集め、足りない分は融資に頼ったりと苦労も多かったですが、やっと実現することができました」と上山さん。
次回は移転によってより充実した施設についてレポートします。
出典/「いぬのきもち」2024年10月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/NPO法人キドックス
取材・文/袴 もな
※保護犬の情報は2024年8月2日現在のものです。