1. トップ
  2. 犬が好き
  3. 連載
  4. 穴澤賢の犬のはなし
  5. 八ヶ岳に移住した理由とオススメ犬とおでかけスポット【穴澤賢の犬のはなし】

犬が好き

UP DATE

八ヶ岳に移住した理由とオススメ犬とおでかけスポット【穴澤賢の犬のはなし】

先代犬の「富士丸」と犬との暮らしと別れを経験したライターの穴澤賢が、
数年を経て現在は「大吉」と「福助」(どちらもミックス)との暮らしで
感じた何気ないことを語ります。

昨年も同じようなことを書いた気がするが、近年の夏の暑さは人間はもちろん、犬と暮らす者にはもはや苦行である。朝6時ですでにアスファルトが焼けているから、散歩は5時台、場合によっては4時台に行かねばならない。夕方もなかなか気温が下がってくれないから、散歩の時間がどんどん遅くなる。

愛犬は気づかぬ飼い主の心配り

つらいのは、なぜそんなに早起きしないといけないのか、なぜ夜の散歩が遅いのか、犬たちは理解してくれないことだ。彼らは日中エアコンの効いた部屋にいるから、外の灼熱地獄を知らない。
だから朝起こすと「なんでこんなに早く起こすの?」という顔をするし、夕方は「もう散歩の時間だよ。何やってんの?」と訴えてくる。それ以外の時間がどれだけ暑いか実感してみろ、というわけにもいかない。
家の中で用を足してくれたらいくぶん気は楽だが、多くの犬は外でしか排せつしたがらない。だから朝のチャンスを逃せないし、夜の散歩までがまんしていると思うと忍びない。絶対に寝坊できないプレッシャーと、不服そうな犬の板挟みになり、早く夏の終わりが来ることを願うしかない。
さらに犬たちは、イレギュラーなお出かけを心待ちにしている。休日に「さ、遊びに行こうか」と言われるのをずっと期待している。けれど、暑くてお出かけなんかできないから、犬にしてみれば待てど暮らせど何もない。すると彼らは露骨に「最近つまんねーオーラ」を出し始める。そんなこと言われても暑いんだから仕方ないじゃん、と言ってもやっぱり犬は理解してくれない。
これらはすべて実際に私が経験したことだ。そもそも気温の上昇と犬は関係ないから、彼らは何も悪くない。けれど、こうした現実があるわけで、来年以降も気温が下がるどころかどんどん暑くなると予想される。

八ヶ岳の移住で変わったこと

そんな現状に耐えかねて、私は2023年に八ヶ岳に完全移住した。標高1400メートルの気温は平地と比べると10℃ほど低いので、今は朝5時に起きる必要はなくなった。朝7時でも平気だし、なんなら昼でも木陰が多いところなら大福と出かけられる。
大福は以前のように不服そうな顔をすることはなくなったし、涼しくて快適そうだ。それでも昨年と比べると今年は暑くなっていると感じる。もしかしたら再来年あたり、エアコンが必要になるのではないかと思っているが、今のところ夜は肌寒いくらいなのでまだ大丈夫だ。
こう書くと、「そんな簡単に移住できていいなぁ」と思うかもしれない。が、移住はめちゃくちゃ大変だった。幸いなのが、仕事が住む場所に限られていなかったことと、2017年から腰越(鎌倉市)と八ヶ岳の2拠点生活をしていたことだが、それでも完全移住となるとやることが山積みで、荷物の整理から各種手続きまで本当に疲れた。
これは持論だが、人は選択肢にないことを自らやることはないと思っている。だから最初から無理だと思ったらやらないし、もしかしたら出来るかも、と思えば出来る可能性はある。もちろん出来ないこともたくさんあるし、私の人生も挫折の連続だが、山に関してはある朝「もう移住しよう」と思い立ったのがきっかけだった。原動力が大福だったこともあるが、やってみたらなんとかなったという感じで今にいたる。
とはいえ、人にはそれぞれ事情もあるから、そんなに簡単に動けないのも分かる。そんな人はひとまず八ヶ岳を訪れてみるといいと思う。たとえば、うちの近くには「天空カート」というのがあり、自動運転のカートに犬と乗って山頂まで登れたりする(そのときの動画は『インスタ』にアップしてるから気になる人は見てみてね)。
山頂は1400メートルくらいだが、見晴らしは最高で、この時期でも犬と散策できる。木陰もたくさんあるから、もし暑そうにしていたら休憩しながら散歩すれば、きっと大喜びで「最近つまんねーオーラ」は消えると思う。
うれしそうに歩く犬の姿を見ていると「なんとかして移住してやろう」という気も起きるかもしれない。私のように。



プロフィール
穴澤 賢(あなざわ まさる)
1971年大阪生まれ。2005年、愛犬との日常をつづったブログ「富士丸な日々」が話題となり、その後エッセイやコラムを執筆するようになる。著書に『ひとりと一匹』(小学館文庫)、自ら選曲したコンピレーションアルバムとエッセイをまとめたCDブック『Another Side Of Music』(ワーナーミュージック・ジャパン)、愛犬の死から一年後の心境を語った『またね、富士丸。』(世界文化社)、本連載をまとめた『また、犬と暮らして』(世界文化社)などがある。2015年、長年犬と暮らした経験から「DeLoreans」というブランドを立ち上げる。

ブログ「Another Days」
ツイッター
インスタグラム

大吉(2011年8月17日生まれ・オス)
茨城県で放し飼いの白い犬(父)とある家庭の茶色い犬(母)の間に生まれる。飼い主募集サイトを経て穴澤家へ。敬語を話す小学生のように妙に大人びた性格。雷と花火と暴走族が苦手。せっかく海の近くに引っ越したのに、海も砂浜もそんなに好きではないもよう。

福助(2014年1月11日生まれ・オス)
千葉県の施設から保護団体を経て穴澤家へ。捕獲されたときのトラウマから当初は人間を怖がり逃げまどっていたが、約2カ月ほどでただの破壊王へ。ついでにデブになる。運動神経はかなりいいので、家では「動けるデブ」と呼ばれている。
楽天ブックス
「犬の笑顔が見たいから」(世界文化社)楽天ブックス
CATEGORY   犬が好き

UP DATE

関連するキーワード一覧

人気テーマ

あわせて読みたい!
「犬が好き」の新着記事

新着記事をもっと見る