ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。
今回は、保護犬のトレーニングを介して若者の自立支援を行うNPO法人キドックス。2022年の広大な敷地に移転し、さらに進化した活動内容について紹介します。
活動を続けていくうちに、目指すことがブレないよう、常に初心に返る
引きこもりや登校拒否などの悩みをもつ若者の自立を、保護犬のトレーニングを介して支援しているNPO法人キドックス。2012年に開設された「キドックスファーム」は、茨城県土浦市にある古い家屋を改築して、保護犬と若者たち双方を助ける施設として運営していました。その後、設立から10年たった2022年4月、キドックスはつくば市の広大な敷地に移転。「ヒューマンアニマルコミュニティセンターキドックス」として、活動の幅を広げてリニューアルオープンしました。
若者を社会から孤立させないための「保護犬による自立支援プログラム」と「地域の愛犬家や子どもたちと交流を深めるイベント」、これらはすべてリンクしています。人にも犬にも「安心できる居場所」を提供していくこと。これがキドックス代表理事の上山琴美さんが目指す「ヒューマンアニマルコミュニティセンターキドックス」の形なのです。
登校拒否だった子どもも犬の力で心を開けるように
最後に今後の計画について伺うと、「じつは、コロナ禍のステイホームを境に、小学生から中学生の子どもたちが学校になじめなくなった、という相談が急激に増えてきたんです。そのため、『どうぶつ子ども食堂』という企画を新たに始めました。子どもたちとキドックスの施設内でアウトドアクッキングなどをして楽しく過ごし、犬ともゆったりふれあう時間をつくるようにしています。最初はなかなか心を開けなかった子どもでも、犬が加わることでほかの子どもたちと自然に会話できたりするんですね」と上山さん。
今後は子どもたちが安心できる居場所をつくってあげること、そして子どもたちへの動物愛護の啓発にも力を入れていきたいそう。「でも、多くの企画を進めていくなかで、常に初心に返ることを忘れないようにしています。キドックスが目指す『人と動物の福祉を広げる』趣旨だけはブレないようにしてきたいです」と最後に語ってくれました。
出典/「いぬのきもち」2024年10月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/田尻光久
写真提供/NPO法人キドックス
取材・文/袴 もな
※保護犬の情報は2024年8月2日現在のものです。