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犬の販売「8週齢規制」の本当の目的は|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.10
今回は「8週齢規制」が犬にとっていかに大切か、というお話。8週齢までは離乳期です。母犬や兄弟犬といっしょにいることが、なぜ法律で守らなければならないほど大事なことなのか、このお話を読めばわかりますよ。(編集部)
動物愛護法の見直しがなされ、生後56日以前の子犬の販売を禁止する、いわゆる「8週齢規制」が2年以内に施行されることになったことを。
生後8週齢以前に母犬から引き離すことを禁じる、動物愛護への取り組みが盛んなヨーロッパの一部の国で取り入れられている規制。それに近いこと?…… が日本でも、いよいよ実施されるということです。
「近いこと?」……あれ、なんか引っかかりのある言い回しをしてしまいましたね。そうなんですね、日本の「8週齢規制」ってヨーロッパのそれと違うんですね。もちろん、喜ばしいことではあるのですが……。
離乳が終わるまで母親といることの重要性
歯が生えてくると、乳首をハグハグするときに加減が必要となります。強く噛めば、母犬に噛み返されてしまうからです。
相手をケガさせない程度の噛み、よくいわれる「噛みつきに対する抑制」。それは、こうした母親とのやり取りのなかで学んでくるといわれています。
離乳が始まる前は、子犬は歩くこともできません。結果、排泄は巣の中(お産のために用意されたスペース)で行います。排泄物はどうなるかというと、母犬が食べてしまいます。しかし、離乳が始まると母犬は子犬たちの排泄物を口にしなくなります。
うまくできているもので、離乳が始まる時期から子犬は歩けるようになります。排泄は、巣から離れた場所で行えるようになるのです。
離乳期は社会化期でもある
「あれはなんだろう?」と気になるものを子犬は確認しに行きます。ときには、不安にもなるでしょう。不安になると、母親のもとに戻り安心を取り戻す。ストレスに強い個体へと成長させるには、こうした体験を積み重ねることが重要と考えられています。
母犬といるということは、兄弟犬もそこにいるということです。子犬同士での、追いかける、飛びかかる、噛み合う、そうした遊びが始まるのです。
すなわち、離乳期に母犬と一緒にいることは、犬同士のコミュニケーションの仕方を学ばせるためにも欠かせないということ、でもあるのです。
さて日本の「8週齢規制」は……
しかし、日本の「8週齢規制」は、生後8週齢以前の子犬の販売を禁止するというもの。8週齢齢以前の子犬を、母犬から引き離すことを防げるわけではありません。
なぜ日本では本来の意味での「8週齢規制」ができないのか。このあたりのお話は次回へ持ち越しということで。
写真/Can ! Do ! Pet dog School提供
西川文二氏 プロフィール
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