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犬もやってる「ソーシャルディスタンス」|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.30

「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今回は、犬もソーシャルディスタンスを気にしているというお話。犬のトレーニングの世界では、ソーシャルディスタンスのような「適切な距離感」が重要視されています。愛犬がどのようにソーシャルディスタンスをしているか、その理由がわかりますよ(編集部)

近頃よく耳にする、ソーシャルディスタンス。
調べてみると「個人と個人との間、集団と集団との間における親密性・親近性の程度、社会的距離」と出てくる。
関係する言葉として出ているのが、「ソーシャルディスタンシング」。人から人へうつる感染症の拡大を防ぐために、人同士の距離を大きくとり、密集度を下げること。
なんだ、よく使われている意味においては、ソーシャルディスタンシングが正しいんじゃないか。
なんでそう言わないのか不思議に思う次第ではありますが、それはさておき、他者との距離を示す言葉として、犬のトレーニングの世界ではそれとは別のワードが昔からよく使われています。

ストレスゾーンあるいはパーソナルエリア

例えばあなたしか乗っていない車両に知らない誰かが一人乗ってきたとします。その人があなたの隣に距離を開けずに座ったら強いストレスを感じるはずです。
どのくらい離れていればストレスを感じないかはケースバイケースですが、嫌だなと感じるこの距離(範囲)をストレスゾーン(あるいはパーソナルエリア)と呼ぶのです。
ちなみに、そうした状況に置かれた場合、人はどういった行動を見せるか?
ひとつは自らが動いて距離を取る、もうひとつは「あっち言ってよ」と相手を遠ざける。いずれにしても相対的にストレスゾーンの外に相手を置くわけです。
犬も同じ。
そして犬のトレーニングにおいては、このストレスゾーンの理解が、苦手な対象に慣らす社会化に、不可欠なのです。

結果的に嫌なことをなくしている

当コラムで何度もお話ししていますが、犬の行動は結果的に「いいことが起きているか」「嫌なことがなくなっている」かのどちらかです。
相対的にストレスゾーンの外に相手を出すことで、強いストレスを排除している。これは嫌なことをなくしているということ。
例えば他犬に攻撃性を見せる犬は、ストレスを感じるストレスゾーンの外へ相手を出そうと攻撃的になり、毎回その行動で嫌なことをなくしているわけです。
犬は体験を学習する。体験を繰り返せば、その行動が得意になり、逆に体験できないことは学習できない。
すなわち、対象への慣れを望むのであれば、飼い主が対象との距離に注意し相手から距離を取るなど、相対的に他者をストレスゾーンに入れないようにすることがまずは重要なのです。
ストレス少なく犬が日常生活を過ごせるよう、他人・他犬とのストレスゾーンは少なくとも1m範囲内に

1m接近してもストレスを感じないように

1mでの他犬とのすれ違いができること、他人が1mまで近づき飼い主にあいさつをする間のオスワリ・マテができること、背後1mを通過するキャスターつきのキャリーなどを無視できること。
以上は、コンパニオン・ドッグに不可欠なトレーニングの指標でもある、JAHA家庭犬マナーチャレンジに記されているチェック項目です。
もし現状2mの距離で反応してしまうのであれば、そこまで対象を近づけないようにして、一方で反応しない距離での慣らしを行っていきます。
犬はいいことが起きる状況を受け入れていきますので、フードが食べられるギリギリの位置で、フードをあげていいことを起こす。
ギリギリの位置がやがて余裕を持てる位置になれば、反応する距離を縮められる。その繰り返しで、1mの距離でも対象物を無視できるようにしていくわけです。
ストレスゾーンに相手を入れないようにして、一方でストレスゾーンを小さくしていく。
とはいえ、言うはやすし、行うはなんとやら。
ご自身の犬が現状、他犬、他者、物体に1mの距離で反応してしまうのなら、しつけ教室などで、プロから直接のアドバイスを受けることを、強くおすすめします。
動く物体に対するストレスゾーンも1m範囲内に
文/西川文二
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html

西川文二氏 プロフィール

公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can ! Do ! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『イヌのホンネ』(小学館新書)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!柴犬ぐらし』(西東社)など。愛犬はダップくん(14才)、鉄三郎くん(10才)ともにオス/ミックス。
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