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犬のやる気の引き出し方|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.41
今回は、犬のやる気の引き出し方に関するお話。しつけのトレーニングも、イヤイヤではなく、犬みずから積極的に取り組んでもらうほうが、覚えがよくなります。どうすればやる気が引き出せるのかを、脳科学の視点から紐解きます(編集部)
日頃宿題もろくにやっていかない私でしたが、得意科目は試験前に勉強すると、そこそこ頭に入っていく。
一方、不得意科目は何時間机の前に座っていても何も頭に入らず、という感じでした。
なんでこんなに差が出るのか、自分でも不思議だったのですが、犬のトレーニングに対するモチベーションを上げるためにはどうしたらいいのかを模索しているうちに、その理由がわかりました。
要は脳のドーパミン神経回路が働くかどうかの問題だったのです。
ドーパミン神経回路はA10神経系、報酬系回路など、さまざまな言い方をされますが、その神経回路が働くと、やる気が高まり記憶力もアップする。
ドーパミン神経回路に関しては、当コラムVol.3で少し触れましたが、今回はその補足を。
ネズミから人間まで持つドーパミン神経回路
きっかけは、fMRI(functionalMRI)、光トポグラフィなどの、要は外科的な措置を行わなくても脳の活動状態が、それも目に見える形でわかる装置が研究に使われるようになったからです。
一般向けの脳科学関連の書籍も、一気に増えていきました。
当時、私は犬のトレーニングのプロとして活動を始めたばかり。犬のトレーニングは、犬に行動を記憶させること。記憶は脳の問題、であれば脳のことを知れば、より効果的なトレーニングの方法がわかるのでは、と脳の一般書籍を読みあさっていました。
残念ながら犬の脳のことを記した書籍はありませんでしたが、脳の基本設計は哺乳類共通、人間の脳とどこが同じで、どこが違うかは知ることができました。
記憶を司る海馬、情動を司る扁桃体、やる気に関係する側坐核などは、ネズミから人間までみんな持っている。
そして、ドーパミン神経回路も、ネズミから人間までみんな持っている。
楽しいことはよく覚える
扁桃体と海馬は隣接しているので、ドーパミン神経回路は海馬も結果的に刺激する。ドーパミン神経回路が働くと、記憶がよくなり、やる気になる。
では、どんなときにドーパミン神経回路が働くのか。
代表的なシーンは、おいしいものを口にしたときと、楽しいとき。
以上のことが、脳のことを勉強するうちにわかってきたのです。
なるほど、フードを報酬に用いるトレーニングは、ドーパミン神経回路を刺激しているかもしれない。であれば、さらに楽しいと感じさせられれば、より効果的にトレーニングが進められる、
まぁ、そういう結論に達したのです。
過度なストレスは記憶を阻害することも
一方、こんな研究報告にも出会いました、強いストレスは新しい記憶の獲得を阻害する、というもの。
嫌がる犬を無理やり……では、新しい行動を効率よく教えることはできない。そういうことです。
冒頭の得意科目と不得意科目の話も、合点が行くというものです。
得意科目は楽しい、ドーパミン神経回路が働くので、やる気も起き、よく記憶できる。一方、不得意科目は仕方がなくいやいややっている状態。新しいことが一向記憶できない。
まぁ、そういった次第だった、ということです。
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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