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「オスワリ」は英語がいいか、日本語がいいか|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.45
犬にオスワリの指示を出すとき、オスワリと日本語で言う人もいれば、「Sit」と英語で言う人もいます。どちらが犬に伝わりやすいか、疑問に思ったことはありませんか? 英語のほうが伝わりやすい? 普段日本語を話しているのだから、指示も日本語でいい? 英語のほうが何となくカッコいい? その答えがわかります(編集部)
前回、横文字ワードをいくつもキーボードに打っていたら、あることを思い出しました。
何を思い出したかというと、90年代コンパニオン・ドッグのトレーニングや、フライングディスク、アジリティなどのドッグスポーツが輸入され広がりを見せていたころ、指示は英語がいいのか、日本語がいいのかという、議論があったことを、です。
英語の響きのほうが、犬にわかりやすい?
「オスワリ」よりも「Sit」、「フセ」よりも「down」のほうが、響きとして伝わる?
犬の雑誌などには、英語のほうが犬に伝わる、なんて記事もあったように記憶しています。
何を根拠にしていたかは今や不明ですが、当時は結構真剣に議論していたような記憶があります。
三項随伴性の理解
なぜなら、犬が言葉に反応して行動を起こすのは、「三項随伴性」に基づいているからだと理解したからです。
三項随伴性に基づき教えるのであれば、英語も日本語もそうは大差ない。
三項随伴性とは学習の心理学や行動分析学で出てくる、すでに何十年も前から明らかにされている理論です。
三項とは、「刺激」と「行動」と「結果」のこと。
「先行刺激→行動→結果(いいことが起きる、あるいは嫌なことがなくなる)」というパターンを繰り返し体験していると、先行刺激に反応して行動を起こすようになるのです。
その時点で、先行刺激は合図(弁別刺激)として機能していくのです。
例えばクシャミを合図で行うようにもできる
鼻先を上に向けているとクシャミをする犬がいます。
ダップがまさにそうでした。私を見上げているうちに、クシャミをよくしたのです。
そこで、クシャミをしたらフードを提供するようにしました。
クシャミをするとフードがもらえるわけですから、ダップは頻繁に私を見上げてクシャミをするようになっていきます。
クシャミをする直前の仕草もわかるようになります。
直前の仕草がわかれば、先行刺激(=のちのち合図として機能する「クシュン!」)を発することが可能となっていきます。
そこで今度は
<「クシュン!」あり→行動→結果あり(フードもらえる)>
<「クシュン!」なし→行動→結果なし(フードもらえない)>
とするのです。
意味のない言葉だってOK
するとどうでしょう。
「クシュン!」の合図に反応してクシャミをするようになり、「クシュン!」の合図を発しないときにクシャミをする頻度は減っていくのです。
合図は別に何だって構いません。重要なのは教える段階で、繰り返し先行刺激(=のちのち合図として使用する刺激)を感じさせる(随伴させる)ことなのです。
どこの国の言葉だろうと、犬には関係ないのです。
極端な話、意味のない音の羅列でも合図にできる。
今思い起こせば、「指示は英語か日本語か?」なんて議論を真剣にしていたなど、意味のない笑い話のような話なんですけどね。
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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