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手術したのに、犬って痛くないの?|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.55
今回は、犬の病気と手術に関するお話。西川先生のパートナー・ドッグ、鉄三郎に、手術が必要な病気が発覚! なのに鉄三郎は至って元気。人となぜこうも違うのでしょうか? 犬と人の痛みの違いについて考えていきます(編集部)
オスは睾丸。メスは子宮と卵巣を摘出する。
いずれも全身麻酔。内臓の一部を取り除くわけですから、人間ならば、それなりの手術といえます。
人間の場合は、盲腸の手術でも1週間は入院。しばらくは笑っただけで、イテテテ、といった状態。術後すぐに歩くことなんて、とてもとてもできません。
でも、犬は動物病院の方針にもよりますが、朝預かって夕方、または1泊して退院というところもあります。
それも、4つ足で歩いて退院するわけです。
どうも彼らは我々とは痛みに対する何かが、明らかに違う。
先日、そのことを改めて考えさせられるできごとが起きました。
X線になにかモワッとしたものが
なんか咳をしているなと感じ始めて2日目の夜、眠れないくらいに咳込むように。
子犬がよく罹患するケンネルコフという感染症があります。数多くの犬で見てきたそれまでのケンネルコフの咳とは、明らかに違う咳の仕方でした。
3日目には回復に向かっていったのですが、一応念のため動物病院へ。
鉄は昨年、巨大食道症なる病気にかかりました(今は治っています)。巨大食道症は誤嚥性肺炎になりやすく、その結果咳込むこともある。その心配もあるので肺の状態も確認しましょうと、X線を撮ることに。結果……
「肺炎の所見は見られませんが、ちょっとここが気になります」と、獣医師はX線画像を指さしました。
咳は収まりしばらくは様子見と
そのときの画像と比較すると、小さな何か白いモワッとしたものがあるような、ないような。
大きな明らかなこれぞ腫瘍というものが確認され、その腫瘍が肺を圧迫しているのであれば、それが咳の原因ということになる。しかし、画像から見てその可能性は低い。ということで、肺炎に至らないよう抗生剤を処方され、1週間ほど様子を見ることとなりました。
咳のほうは、それから3日ほどで完全に収まりました。
何か白いモワッとしたものの確認はというと、鉄は甲状腺機能低下症という持病も抱えていて3カ月に一度の割合で検診(ホルモン検査)を行っているのでそのときに、としました。
モワッとした何かは、はっきりと大きく変化
獣医師の見解は、胸腺腫の可能性が高いということ。
腫瘍に針を刺して組織を調べるのが次の段階ということで試みたのですが、肺に穴を開けてしまうリスクの高い位置に腫瘍があるということで、それはできませんでした。
あとは、MRIやCTによる画像診断を行うか……。
ただ胸腺腫だろうとなかろうと、悪性だろうと良性だろうと、取れるものは取るべき。だったら手術しましょう、という話になりました。
とはいえ、腫瘍があるのは肋骨の内側。
すなわち、いわゆる、ひとつのところの、開胸手術ということになるわけです。
胸にメスを入れ、開胸器で肋骨と肋骨の間を開き、患部を切除するわけです。
術後、人間なら1カ月は入院、社会復帰までは3カ月を有するような手術です。
果たして、鉄の運命やいかに……です。
(続きは次回へ)
写真/Can ! Do ! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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