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犬と一緒に寝てもいいかどうかのホントのところ|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.61
「いぬのきもちWEB MAGAZINE」が送る連載、家庭犬しつけインストラクター西川文二氏の「犬ってホントは」です。
今回は、さまざまな意見が聞かれる「愛犬と一緒に寝ること」について。寝てもいいという意見もいれば、よくないという意見もあります。よくない場合は、どんな理由があるのでしょうか? はっきりしないために飼い主さんが迷いがちなこの問題に対して、西川先生が回答します(編集部)
先日、ある生徒さんから質問されました。
「犬と一緒に寝ていいのでしょうか?」
これ、1990年代に広まった(今では間違いとされている)リーダー論に基づくしつけではNG、とされていました。
サル山のてっぺんにいるのはボスザル、牢名主は一番高い場所に鎮座する。
リーダーは、下位の存在よりも常に高みの位置を陣取る。
寝床も同様。リーダーは、下位の存在よりも高いところで寝る。
同じ高さで寝てしまうと同等の関係になってしまい、飼い主をリーダーと思わなくなってしまう。
まぁそんな理由です。
もちろん、そうした話は現在では否定されているわけですが、実際の話、一緒に寝るのはありなのか?

上下関係とか関係ないけれど
私が小学生の頃から社会人になるまでの18年間、父に溺愛されていたトイ・プードルのチャーリーは、父の布団の上で寝ていました。
社会化なんて言葉もなかったような時代の話です。性格は臆病、しつけといえば当時の定番、オスワリ、お手、お代わり、オアズケ、よし程度。
父は8畳の和室で布団を敷いて寝ていて、チャーリーはその布団の上で父の傍で寝ていました。
このチャーリー、私が彼に何をしても基本無抵抗なのですが、私に向かってうなる、吠えつく行為を見せるお決まりのシチュエーションがありました。それは、父の寝ている布団の縁に私の足が乗ったとき。いわゆる、場所守りをしちゃうんですね。
まぁ、番犬の時代の話ですから、父の番犬としては頼もしいわけですが、コンパニオン・ドッグ、家族の一員としての犬と考えるのなら、これはNG。
何が言いたいかというと、一緒に寝ることそのものが問題というわけではないけれど、適切なしつけを行わないで一緒に寝ていると「場所守り」という問題が起きてくるかも、ということなのです。
家族の誰に対しても場所守りをしないようにする
好ましくない行動は体験させない、体験できなければ習慣化に至らない、一方で好ましい行動を教えていく。
ソファでもベッドでも、膝の上でも、家族の誰が指示しても、その場所を譲るようにトレーニングをする。
それができていれば、一緒に寝ても、先程挙げた場所守りという問題は起きません。
しつけとは将来の問題を未然に防ぐために行います。
まぁ、早い話しつけが十分にできていれば、一緒に寝ても構わないということ。逆に。しつけが十分にできるまでは、寝ることは控えるべきということ。
実際、私は生徒さんたちにそう伝えています。
あっ、そうそう、ただし、条件はつきます。
寝る場所、それと「犬種」によっては、という条件がです。

小型犬とベッドの組み合わせはNG
トイ・プードル、パピヨン、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア……こうした犬たちはソファの高さから飛び降りて足を折ることも。ベッドから飛び降りて足を折る可能性は当然あるわけです。
たとえ家族の誰が指示しても、その場所を譲るようしつけができていても、成犬で3㎏程度になり骨太ではない犬種たち、彼らとベッドで寝るのはケガのリスク回避という意味でNG、となるのです。
ちなみに、犬種問わずNG、という獣医師もいます。
理由は、人畜共通感染症のリスクが伴うので、ということ。
さて、かくいう私はどうかというと、人畜共通感染症のリスクは気にしませんが、犬たちと一緒には寝ていません。
なにせ、一緒に寝ている相手が別にいるもので。「こにゃ」っていう奴が。

文/西川文二
写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
公益社団法人日本動物病院協会(JAHA)認定家庭犬しつけインストラクター。東京・世田谷区のしつけスクール「Can! Do! Pet Dog School」代表。科学的理論に基づく愛犬のしつけ方を提案。犬の生態行動や心理的なアプローチについても造詣が深い。著書に『イヌのホンネ』(小学館新書)、『いぬのプーにおそわったこと~パートナードッグと運命の糸で結ばれた10年間 』(サイゾー)、最新の監修書に『はじめよう!柴犬ぐらし』(西東社)など。パートナー・ドッグはダップくん(15才)、鉄三郎くん(11才)ともにオス/ミックス。
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