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行政に寄せられる、犬に多い苦情3つ|連載・西川文二の「犬ってホントは」vol.62
今回は、犬に多い苦情に関するお話。飼い主さんにとってはドキッとする話題ですが、今回はその中でも非常に苦情の多い「吠え」について、西川先生が掘り下げます。吠えにもさまざまな種類があり、愛犬に当てはまる「吠え」があったら要注意です(編集部)
この3つ、行政に持ち込まれる犬に関わる苦情のトップ3です。
北海道から沖縄まで、行政の依頼で犬のしつけの講演に出向いておりますが、私の経験上、どの地域でもこのトップ3は変わりません。
ウンチの放置と放し飼い、この2つはモラルの問題で、しつけのトレーニングとは直接関係ありません。
しつけに関わるのは、「吠え」です。
さて人間も犬も同じですが、しつけとは「将来の起こり得る可能性のある問題を予防するために必要なこと」、といえます。
このコロナ禍、犬を飼い始める人が増えているそうでして、ご自身の犬が苦情の元にならないように、ここはひとつしつけをしっかり行って、将来の起こり得る可能性のある問題の芽を摘み取っておきましょう。

吠えには2種類ある
そして、前者①の代表は「要求吠え」、後者②は「警戒吠え、追っ払い吠え」です。
前者①の要求吠えが起きやすい(習慣化させやすい)飼育環境があります。
それは、サークル内にトイレとベッドを配置する、という飼育環境(サークル飼い)です。
トイレのしつけもうまくいかないそうした飼育環境を、なぜペットショップ等がすすめるのかに関しては過去のコラムをご参照していただくとして、サークル飼いが要求吠えを習慣化する理由を、ここではお話しします。
それは飼い主の動きが駄々見えだから。
特に成長期の犬は、脳の活動の揺らぎから生じる、いろいろな試し行動を行います。試しに飼い主を見て吠えてみた、結果飼い主が注目してくれた(=いいことが起きた)。
こうしたことの繰り返しで、やがて要求吠えに悩まされることになるのです。
ではどうしたらいいか。
相手をする時間と、休ませる時間のメリハリをつけ、休ませるとき(相手にしないとき)は、飼い主の姿が見えないよう掛け布をかけたクレート(箱型のハウス)で休ませることです。
こうすることで、要求吠えの習慣化は防げるのです。

警戒吠え、追っ払い吠えを防ぐためには
具体的には来訪者に慣らす、外の音に慣らす、ということになります。
犬は警戒心が強い動物です。だからゆえ、日本では近年まで番犬として重宝されてきたわけです。
とはいえ、警戒心よりも好奇心が上回っている時期(社会化期)が、その成長期においては存在します。
その社会化期に、来訪者、来る人来る人からフードをもらうことです。
「家にやって来る人はすべて自分にとっていいことをもたらす」→「いいことをもたらす相手を追い払う必要はない」→「結果追っ払い吠えが起きない」、ということになるのです。
音に対しての慣らしも必要です。いろんな音を録音して、鳴らしてはフードをあげる。まずは室内の音に慣らして、外の音にも慣らしていく。
確実なオイデができるようトレーニングする
一旦吠えるようになってしまった犬の吠えをゼロにするのは厄介かもしれません。ただ、苦情にならない程度に吠えをコントロールすることは可能です。
具体的には、オイデをしっかり教えることです。
苦情になる吠えは、制御できない吠えです。
ワンワン、と数回吠えてもそれで収まるのなら、苦情には至らないのが一般的です。
オイデが確実にできれば、「ワンワンワン→オイデ→飼い主の元へ」と、吠えは制御できるということです。
思えば、犬はつい最近まで、特に日本では吠える習性をありがたがられていたわけで、それがいつかしら「吠えるな」となって……いやはや犬からすれば、たまったものではないでしょうな。
つくづく人間ってのは、身勝手な動物ということです。

写真/Can! Do! Pet Dog School提供
https://cando4115.com/index.html
西川文二氏 プロフィール
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