犬が好き
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トライアル期間を経ても難関が。「心を閉ざした野犬」を迎えた飼い主の奮闘と、愛犬の成長にグッとくる
いぬのきもちWEB MAGAZINEでは、杢くんとの出会いや今の暮らしなどについて、飼い主さんにお話を伺いました。
怯えた表情をしている杢くんの写真を見て、会いに行くこと決意

そんな時期に、保護犬サイトでなんともいえない怯えた表情をしている1頭の子犬の写真を目にします。そのコが杢くんでした。

飼い主さん:
「杢はその後、保護団体の東京支部に移送されていて。偶然にも、杢が保護されている場所が近所だったので、『初めてで保護犬のことが何もわからないからこそ、一度杢に会いに行ってみよう』と施設に行ったのが始まりでした」
杢くんを家族に迎えるまでのこと


「いきなり迎え入れるのは可哀想だと思い、トライアルに入る前の2週間、毎日保護施設に通い、ごはんを手からあげて、杢に信用してもらえるように努力を重ねました。
最初は近づくだけで逃げられてしまいましたが、少しずつ慣れてきて、手から食べてくれるようになったときのことが、今でも印象に残っています」
トライアル期間→正式な家族になってからも、さまざまな難関が

飼い主さん:
「当時、杢はまだ生後5カ月ほどだったので、『愛情たっぷりに接していたらすぐ慣れるはず!』と何の根拠もない自信がありましたが、そう簡単にはいきませんでした。杢は極度に人への警戒心が強く、もはや野生の動物と暮らしているような感覚で…今まで私が抱いていた犬の概念は覆されました」

飼い主さん:
「真夜中の人がいない時間に散歩したり、保護施設で出会った仲間と一緒にお散歩の練習もしました。恐怖心が強い杢ではありますが、杢自身が『犬が好き』という唯一の頼みの綱を最大限に生かす方法を考えました」
杢くんの成長を感じる出来事が

飼い主さん:
「『お散歩=大好きな犬に会える!』という気持ちが、杢に芽生えたようで。これがきっかけで、毎日車で15分かけてその公園に通い続け、お散歩前にはブルブルと震えていた杢が、家の階段前で『早く散歩行こうよ!』と催促するようになったんです。
杢のあの姿を見たときには、本当に涙が出るほど嬉しかったです。迎えた頃の杢からは想像すらできない、びっくりするほどの成長でしたね」
家族が増えて、杢くんの新たな一面も
飼い主さん:
「杢は寡黙で余計なことは一切口にせず、 飼い主であっても一定の距離を置いています。人には媚びず、悟りを開いているかのような偉大さもあります」

「2021年6月15日に、元保護犬・土筆(つくし)を家族に迎えました、杢は散歩のときに後ろを振り返り、土筆がついてきているかを確認したり、見えなかったら立ち止まったり。土筆が声を出すと、杢が心配そうに駆け寄ることもありました。
お散歩が怖かった杢だからこそ、 土筆のお散歩が心配で仕方がないのかもしれません。土筆に『ウー』と言われたり、オモチャやベッドを取られてもそんなことは関係なく、優しさで土筆を包み込む杢の姿を見ると、本当に愛おしい気持ちでいっぱいになります」
愛犬たちの成長をそばで見守りたい
2頭がどのように心を開いてくれるのか、これからもずっとそばで見守っていきたいと、飼い主さんはいいます。
「杢のしっぽが少し上がっただけでも嬉しかったように、特別なことは求めません。これからも少しずつできることが増えていく日々の成長を楽しみたいと思います」
取材・文/雨宮カイ
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