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【獣医師監修】犬の尻尾(しっぽ)から気持ちがわかる? 表す感情と役割を紹介

犬のしっぽからは、さまざまな感情が読み取れます。ここでは、しっぽからわかる犬の気持ちを解説。犬がしっぽを追いかける・噛むといった行動をとるときの原因や、犬と猫におけるしっぽでの感情表現の違い、感情表現以外のしっぽの役割についても解説します。

滝田 雄磨 先生

 獣医師
 SHIBUYAフレンズ動物病院院長

 麻布大学獣医学部獣医学科卒業
 東京農工大学農学部附属動物医療センター皮膚科研修医
 ふく動物病院勤務
 SJDドッググルーミングスクール講師

●資格:獣医師

●所属:日本獣医皮膚科学会日本獣医動物行動研究会

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尻尾(しっぽ)に表れる犬の気持ちとは

柴
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬のしっぽにはさまざまな役割があります。そのひとつが感情表現です。

基本的に、犬のしっぽが上に向いているときは「うれしい、楽しい」といったポジティブな感情を抱いているといえ、下がっているときは「不安、恐怖、怯え、警戒」といったネガティブな気持ちになっていると考えられます。

また、しっぽの様子をよく観察すれば、以下のように犬の気持ちを推測することもできるでしょう。

しっぽの様子でわかる犬の気持ち

しっぽの様子犬の気持ち
ピン!と立てる集中、警戒、攻撃、威嚇、遊びの誘い、誇示、自信、警告、興奮など
立てたまま左右に振る親しさ、信頼、興味、好奇心、興奮、挨拶など
立てたまま左右に振って吠えるうれしさと興奮状態、要求、警戒など
だらんと下げるストレス、恐怖、不安、疲労状態など
下げたまま左右に振るリラックス状態、期待など
体の内側に丸める極度の恐怖、身体に痛みを感じている、降参など
上側にくるんと巻く誇示、自信、支配など
ちぎれそうなほど激しく振るうれしさ、楽しさ、興奮状態など
ちぎれそうなほど激しく振って吠えるうれしさ、楽しさ、最大級の喜び、興奮状態など
体と水平に伸ばし固定興味、好奇心、やや緊張など
体と水平に伸ばし振るやや不安、心配、状況確認中など
下がったしっぽの先だけを小刻みに振るごますり、服従、敬意、緊張、不安など

※すべての犬に当てはまるわけではありません。
ただし、犬はしっぽのみならず、さまざまな体のパーツを使って感情を表現しています。そのため、犬の感情を読み取るには、表情、耳の位置、姿勢、声のトーンなどを含めて考えることが大切です。

しっぽの振り方でも気持ちがわかる

しっぽの振り方や動かす速度でも、感情の違いがわかります。たとえば、しっぽを小刻みに早く動かしているときは、「うれしい、楽しい」といった喜びの気持ちを表現しているといえます。一方で、ゆっくり動かしているときは、「不安、恐怖」などによる警戒心を抱いていると考えられるでしょう。

しっぽを振る方向が右or左で意味が違うという研究結果も!

日ごろから愛犬をよく観察している飼い主さんは、犬がしっぽを右に強く振るときと、左に強く振るときがあるのを、見たことがあるかもしれません。イタリアでは、この左右の振り方の違いが「行動学の研究」として発表されています。まだはっきりしない部分も多いようですが、現段階では次のような結果が出ているといいます。
  • 喜びの気持ちを感じると左脳が刺激されてリラックス状態となり、「右側」にしっぽを振る
  • ストレスを感じると右脳が刺激されて高い心拍数の状態になり、「左側」にしっぽを振る
しかしデータが少ないこと、しっぽ以外の犬の様子やその場の状況が含まれていないことから、これらの研究結果は確実とはいえません。とはいえ、非常に興味深いデータですね。犬が落ち着いている状態のときに、しっぽがどちらに大きく揺れるのか見てみるのも面白いかもしれません。

犬が自分のしっぽを追いかける・噛むのはどうして?

犬の後ろ姿
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
愛犬が突然、自分のしっぽを追いかける・噛むなどの行動をしていたことはありませんか? この行動の原因としては、皮膚炎や腫瘍によるかゆみや痛み、てんかん発作のほか、退屈しのぎや常同症という病気などが考えられます。

ちなみに常同症とは、自分のしっぽを追い続ける、足先をなめ続けるなど、同じ行動を執拗に行って体を傷つけてしまう心の病気です。長時間の留守番やスキンシップ不足などが原因でしょう。

クセになってしまっているケースも

長時間の留守番時などに、退屈を紛らわすためにしっぽで遊んでいると、それがクセになってしまうケースもあります。このような行動が見られた場合は一緒に遊ぶなどし、「グルグル回るよりも飼い主さんと遊ぶほうが楽しい」と思わせましょう。

なお、留守番が多い犬は、しっぽの毛の長さが短くなっていないか、しっぽ周辺の皮膚をなめたり噛んだりしていないかなど、しっぽの状態をチェックしてみることも大切です。飼い主さんが見ていないときにケージの中でストレスを感じ、しっぽを追いかけて噛んでいる場合もあります。

犬のしっぽには病気のサインが表れる?

巻尾
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬のしっぽには、病気のサインが表れることもあります。

たとえば、しっぽがいつもよりだらんと下がり続けている、しっぽの振り方に力がない、バランスが取れずにフラフラと歩くなど、いつもと違った行動や様子が見られる場合は、犬の身体に異変が起きている可能性があります。

この場合、しっぽを強くぶつけた、家や車のドアに挟めた、犬同士でケンカした、子どもが犬のしっぽを強く引っ張ったなどの理由で、しっぽを動かすための筋肉や神経を傷めていたり、骨折していたりするおそれが。まずはしっぽを触って痛がらないか、腫れていないかを確認しましょう。

なお、しっぽの異変は損傷や骨折だけでなく、「椎間板ヘルニア」や「馬尾症候群」などによる神経障害の可能性も考えられます。原因を早く見つけるためにも、異変を感じたらすぐ動物病院を受診するようにしてください。

犬と猫は尻尾(しっぽ)での感情表現に違いがある?

犬のしっぽ
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬がしっぽで感情を表すように、猫のしっぽからも気持ちが読み取れます。ここからは、犬と猫のしっぽにおける感情表現の違いをチェックしてみましょう。

かまってほしいとき

犬はしっぽを左右に振りますが、猫のしっぽはまっすぐピンと立ちます。猫の場合、このしぐさは子猫が母猫に近づくときの名残で、「ここにいるよ」「こっちを見て」といったアピールしたい気持ちが考えられます。

緊張・興奮しているとき

緊張や興奮しているとき、犬はしっぽをピンと立てるか、体と水平に伸ばして振ることがあります。一方、このような状態の猫はしっぽを左右に大きく振ります。犬がしっぽを立てたまま左右に振るのは好奇心や親しみを表すときなので、猫とは大きく違いますね。

リラックスしているとき

リラックスしているときは、犬と猫で似たようなしっぽの動きが見られるでしょう。犬はしっぽを垂らしたまま左右に振り、リラックス中でごきげんな猫もしっぽをゆったりと揺らします。

怖いとき

何かを怖がっているときも、しっぽの動きが似る傾向があります。犬はしっぽを体の内側に巻き込み、猫のしっぽは後ろ足の間からおなかの下に入ります。これは「怖い」という気持ちの表れで、猫の場合、同時に後ろ足を曲げて体を低くすることも多いでしょう。

その他知っておきたい、犬の尻尾(しっぽ)の役割とは

散歩するダックスフンド
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
気持ちや体調を表現する以外にも、犬のしっぽには以下のような役割があります。

身体のバランスをコントロールする

犬のしっぽには、身体のバランスをコントロールする役割もあります。犬が走るときや急旋回するときによく見ると、しっぽを上手に使ってバランスを取っているでしょう。人が平均台の上に乗ったとき、両手を水平にしてバランスを取るのと同じように、犬もしっぽで体をコントロールしているのです。

とくにわかりやすいのは、犬が川遊びなどで泳いでいるとき。犬は泳ぐときに4本の足を使いますが、顎で泳ぐ方向を定めながら、しっぽをうまく使って泳ぐ方向のバランスを取ります。ちなみに、断尾している犬はしっぽのある犬と比べて、その機能を最大限に発揮できない可能性もあります。

寒さを防ぐ

犬は寒さを感じると、丸まって体を震わせることで体を温めようとします。その際しっぽを体に巻きつけて温めたり、しっぽや太ももの下に顔を入れ、鼻から冷たい外気を吸わないようにしたりします。
そのため、長時間の雪遊びなどで本当に寒さを感じた場合は、しっぽを使って驚くほど小さく丸まることがあるでしょう。しっぽは寒さ防止としての機能も備えているのです。

犬のしっぽから気持ちを読みとろう

走る犬
いぬのきもち投稿写真ギャラリー
犬は人のように言葉を話すことができません。犬はその代わり、しっぽや表情、声のトーンなど全身を使って感情を表現し、コミュニケーションを行います。それらの感情表現から犬の気持ちを読み取ろうとすることで、愛犬との距離がより縮まるでしょう。
参考文献
イタリアの研究チームによる脳に関連する犬の尻尾の左右の感情表現について
https://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(13)01143-3
誠文堂新光社「ドッグトレーナーに必要な深読み先読みテクニック」ヴィベケ・S・リーセ
八坂書房「ドッグズマインド」ブルース・フォーグル

参考/「ねこのきもち」2018年7月号『いつまでも眺めていたいな 癒しっぽ』
監修/滝田雄磨先生(SHIBUYAフレンズ動物病院院長)
文/松本マユ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。
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