夏であっても基本的に犬の散歩は毎日必要ですが、屋外に出て、予想を上回る暑さに愛犬と襲われたときはどうすればよいのでしょうか。少しの間と思っても、その数分が愛犬にとって命取りになることも。
そこで今回は、散歩時の暑さ対策や熱中症の応急処置法などについて、災害時のペット問題にも取り組む獣医師の大下勲先生に解説していただきました。
散歩中に想定以上の暑さに見舞われたら?
愛犬が熱中症になった飼い主さんの例には、「少しなら大丈夫」と油断していたケースが多く見られます。また、気温が高くなくても湿度が高い場合は、熱中症リスクも高めに。
飼い主さん自身が暑さを感じたり、愛犬の呼吸がいつも以上に速いなどの異変が見られたりしたら、すぐに散歩を中断しましょう。
愛犬に熱中症の初期症状が見られたら? 応急処置の手順
熱中症はあっという間に進行し、軽症であっても後遺症が出たり、最悪の場合は死に至ったりする病気。初期症状が出たら最後、応急処置を施して生存率を高めることしかできません。少しでも異変が見られたら、即座に応急処置を行いつつ医療機関へつなぎましょう。
熱中症の初期症状の例
- 浅くて速い呼吸(ハッハッハッという短い呼吸)が続く
- 体が熱い
- ヨダレをいつも以上に垂らしている
- ウロウロして落ち着きがない
- 足どりがフラフラしている
対処が遅れると重篤な症状に
進行すると低血圧のほか、おう吐やけいれん、ショック症状や神経症状、意識障害などを起こし、多臓器不全に。進行するほど生存率は低下していきます。
応急処置のやり方
(1)涼しい場所へ即座に移動
イラスト/二階堂ちはる 「いぬのきもち」2025年7月号『熱中症はもちろん! 災害から愛犬の命を守る 夏のサバイバル術』
冷房の効いた場所か、直射日光の防げる木陰など、なるべく涼しい場所に移動します。愛犬を抱っこするなど、すばやい行動を。
(2)流水で体を冷やす
イラスト/二階堂ちはる 「いぬのきもち」2025年7月号『熱中症はもちろん! 災害から愛犬の命を守る 夏のサバイバル術』
自宅の場合はシャワー、屋外の場合はペットボトルなどで愛犬の全身に水をかけて冷やします。首まわりやわきの下へ重点的にかけましょう。
(3)常温の水を飲ませる
イラスト/二階堂ちはる 「いぬのきもち」2025年7月号『熱中症はもちろん! 災害から愛犬の命を守る 夏のサバイバル術』
愛犬が自分で水を飲めるようなら、常温の水を飲めるぶんだけ飲ませましょう。誤嚥(ごえん)の危険があるので、無理に飲ませるのはNGです。
なお、犬の体温を下げるには冷えた血液を全身に巡らせる必要がありますが、冷たすぎる水を使うと末端の血管が収縮し、循環しにくくなるので冷やしすぎもNG。冷水ではなく常温の水を使いましょう。
応急処置をしながら動物病院へ連絡を
応急処置で回復したように見えても、体内に異変が残っていて、あとから後遺症が出てくるケースもあります。初期症状が見られた時点で受診は不可欠。応急処置をしながら動物病院へ連絡しましょう。
夏の散歩は「暑さを避けること」が備えにつながる
参考・写真/「いぬのきもち」2025年7月号『熱中症はもちろん! 災害から愛犬の命を守る 夏のサバイバル術』
夏の散歩は、暑さを避けることこそが大事。日が昇ると一気に気温が上昇するので、散歩は早朝や日没後など、28℃以下の時間帯に行くのが安心です。
ただし、日没後もしばらくは地面が熱いので、地面の温度にも注意。愛犬と外に出る前に飼い主さんだけ先に外に出て、手のひら全体で地面に触れ、最低1分間触っていられるぐらいの温度かチェックしてください。
夜散歩の場合は、応急処置が必要になったときに備えてライトがあるとよいでしょう。
散歩バッグにはクールグッズを常備して
参考・写真/「いぬのきもち」2025年7月号『熱中症はもちろん! 災害から愛犬の命を守る 夏のサバイバル術』
クールグッズは常に散歩バッグに入れておきましょう。保冷剤のほか、水でぬらしたタオルで愛犬を包み、その上からハンディファンで風を当てると、気化熱で冷えて応急処置にもなります。いつでも使えるように、冷却と充電は欠かさずにしておきましょう。
愛犬の命を守れるのは飼い主さんだけ。そのためにも、正しい知識を身につけておくことが大切です。
お話を伺った先生/大下勲先生(大下動物病院院長 公益社団法人日本獣医師会危機管理室室員 大阪VMAT(獣医療支援チーム)副隊長)
参考・写真/「いぬのきもち」2025年7月号『熱中症はもちろん! 災害から愛犬の命を守る 夏のサバイバル術』
イラスト/二階堂ちはる
文/長谷部サチ
※一部写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性がない場合もあります。