人はストレスを強く感じることで心のバランスを崩し、病気になることがありますが、それは犬も同じです。ここでは、ストレスが引き起こす、犬の“心の病気”について解説します。愛犬を心の病気にさせないためにも、日ごろの接し方を見直してみましょう。
強い不安や恐怖心に襲われてしまう「不安症」
強烈な恐怖体験をしたり、緊張状態が続いたりすることで発症するのが「不安症」です。不安症になると、過去のストレス体験と目の前の条件が一致した途端に、強い不安や恐怖に駆られ、吠える、噛む、物を壊すなどの問題行動をとってしまうようになります。
犬に多いとされる「分離不安」は不安症のひとつで、飼い主さんの不在に過剰な不安を感じてしまう病気です。分離不安になると、四六時中飼い主さんについて回ったり、留守番中に問題行動を起こしたりします。
ストレスによって思考回路が異常になってしまう「常同症」
「常同症」は、長期間にわたる強いストレスによってかかる心の病気です。常同症になると、感じているストレスを何とか解消しようと、自分の尻尾を執拗に追う・噛む、同じ場所をウロウロする、体をかき続けるなど、一定の行動を繰り返すようになります。なかには、出血しているのにやめられず、自分の体をどんどん傷つけ続けてしまう犬も……。
ただし、一定の行動を繰り返すのは、脳炎などの脳の病気が原因の可能性も考えられます。気になる症状が見られる場合は、獣医師に相談しましょう。
ストレスに耐え続けてキレてしまった状態の「攻撃症」
犬は積もり積もったイライラや恐怖体験から、ストレスを与えてくる相手を攻撃することを学び、攻撃的あるいは反抗的になることがあります。これが「攻撃症」といわれる病気で、ストレスを与えられる前に攻撃することで、自分をストレスから守ろうとしているのです。
この攻撃症は、悪天候が続いて思うように散歩に行けないなど、不可抗力によっても引き起こされるので注意が必要です。また、攻撃することでストレスを回避できた経験をすると、重症化することも。すぐ唸る・噛む、名前を呼んでも無視をするようになったら、ストレスを感じていないか、生活を振り返ってみましょう。
食べることにしか楽しみを見いだせなくなる「肥満症」
犬はストレスによって食欲が増進することがありますが、「肥満症」になると、どんなにご飯を与えても欲しがるようになります。1日中何かを食べようとするなど、異常なほど食べるので、太ってしまう犬がほとんどです。
肥満症は、飼い主さんとの遊びや散歩が不足し、日々の生活の中で食べることにしか楽しみを見いだせなくなってしまった状態。大きなストレスというよりは、小さなストレスが蓄積されることで、かかりやすくなるといわれています。
重度のストレスによって何もやる気が起きない「無気力症」
「無気力症」は、強いストレスを感じた末の心の病気の最終形です。生活に少しの期待も見いだせず、不安や怒りさえも感じなくなってしまった状態なので、食事は与えれば食べますが、与えなくても欲しがらなくなります。
ほかにも、名前を呼んでも反応しない、表情に変化がない、動こうとしないなどの症状が見られるように。虐待や飼育放棄を受けた犬に見られやすい病気といえるでしょう。
犬の心の病気は、専門的な治療が必要となるケースもあります。まずは心の病気にならないように心がけることが大切ですが、気になる様子が見られる場合は、なるべく早く獣医師に相談しましょう。
参考/「いぬのきもち」『ベテラン飼い主さんも意外と知らない 愛犬のストレス事典』(監修:ノヤ動物病院院長 野矢雅彦先生)
文/ハセベサチコ
※写真はスマホアプリ「いぬ・ねこのきもち」で投稿されたものです。
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。