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【ホントにあった犬の事件簿①】譲渡した保護犬を「返してほしい」と裁判に!気になる判決は?
ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
この連載では、過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、東京地方裁判所で平成27年6月24日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは、渋谷 寛先生。
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
譲渡したペットを後から「返してほしい」と裁判に!
仮設住宅では、犬や猫の治療も充分にできない状態だった

Aさんは当時、東日本大震災で被災し、仮設住宅に暮らしていました。震災で行き場をなくした犬1頭と猫14匹を保護して飼っていたものの、4畳半の狭い部屋の生活で、物資も限られており、犬や猫のお世話を充分に行えない状態でした。動物を保護するボランティアをしていた獣医師のBさんは、Aさんが困っていると連絡を受け、仮設住宅に出向いて話を聞き、犬1頭、猫4匹を引き取ります。
一時的に引き取り手が見つかったAさんは喜びますが、1カ月後、犬や猫に会わせてほしい、返してほしいとBさんに連絡すると、犬や猫はすでに新しい飼い主さんに譲られたあとで、個人情報の関係からその人の連絡先も教えてもらうことができませんでした。Aさんは怒って、犬猫の返還と慰謝料など330万円をもとめてBさんを訴えました。
取り返したい犬や猫の情報が少なく、特定できないと判断
Aさんには、取り返したい犬や猫について、写真と名前、保護したときの状況を記した書類しか裁判所に提出できるものがありませんでした。裁判所は、取り返すためには、その手続きを行う第三者にとってもその犬や猫が区別できなくてはならず、Aさんの情報では犬や猫が特定できないと判断しました。また、当時の状況からは、Aさんが犬や猫の新しい飼い主さんを探すためにBさんに引き渡したと受け取られてもしかたがなかったと判断し、Aさんの訴えを却下しました。
飼い主さんの訴えが却下された!

震災や災害などの非常時に、愛犬とはぐれてしまったり、知らない間にほかの人に引き取られてしまうことは充分にあり得ます。第三者の助けを借りて愛犬を探すときに、誰にとっても愛犬が特定しやすいよう、愛犬に鑑札をつけたり、マイクロチップの挿入などを検討してみましょう。
参考/「いぬのきもち」2016年6月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/別府麻衣
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