ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、大阪地方裁判所で平成27年2月6日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
脱走した大型犬がチワワに衝突し、ショック死させた!
チワワの死因は「急激な興奮による心不全」
被害にあったのは、15才のシニア期のチワワ。早朝に散歩をしていると、近くの店から逃げ出してきた大型犬がいきなり突進してきました。大型犬がぶつかってきたのに驚いたチワワはけいれんして倒れ、そのまま亡くなってしまいます。亡くなったあと運ばれた動物病院で、獣医師は、チワワの死因を「急激な興奮による心不全」と診断。大型犬が以前も逃げ出したことがあったと聞いていた飼い主さんは、大型犬の飼い主のBさんを裁判で訴えることにしました。
大型犬は以前も脱走しており、飼い主さんの管理が不充分とされた
大型犬は、Bさんが経営していたお店の駐車場で、チェーンでつながれて飼われていました。突進の現場を目撃していなかったBさんは、裁判で「そもそも愛犬は逃げ出していない」と主張します。しかし、裁判所は、大型犬のチェーンと首輪をつなぐリングのねじがはずれていたことや、当日の事件の状況などから、「大型犬が突進し、そのショックでチワワが死亡した」というAさんの供述は信用に値すると判断。以前も逃げ出した大型犬を、再び逃げ出せる状態にしたのはBさんに責任があると、チワワの葬儀費や慰謝料など、計22万円あまりの支払いを命じました。
判決は……合計22万円あまりの支払いが命じられた
小型犬にとって、大型犬のような体格差のある犬の突進は脅威になり得ると裁判所が判断したこの事件。とくに大型犬の場合は力が強いので、飼い主さんは、愛犬のリードや首輪の留め具が古くなったり、ゆるんだりしていないかこまめに確認し、定期的に新調しましょう。また、小型犬の飼い主さんも、危険が及んだとき、とっさに愛犬を抱き上げて守れるよう、ふだんから抱っこに慣れさせる練習をしておきましょう。
参考/『いぬのきもち』2016年1月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/別府麻衣