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不適切な治療で愛犬が慢性腎不全に……動物病院を訴えた実例は

ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!

過去、実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。

今回ご紹介するのは、大阪地方裁判所で平成29年4月14日に判決が出た事例です。

※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。

お話してくれたのは……渋谷 寛先生

弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。

動物病院の不適切な治療で、愛犬が闘病ののち死亡……

手術を受けた愛犬が、慢性腎不全とアジソン病を発症

術後の経過が思わしくなかった(イラスト/macco)
術後の経過が思わしくなかった(イラスト/macco)
Aさんの愛犬は、ある動物病院で子宮蓄膿症の手術を受けました。手術は無事終わり、4日間入院ののち、愛犬は退院。ところが術後の通院時の検査結果が思わしくなく再入院し、さらに別の動物病院でも診察を受けたところ、腹壁ヘルニアの発症がわかり、手術を受けることになりました。その後、愛犬は慢性腎不全およびアジソン病となり、2年9カ月の闘病ののち死亡しました。

Aさんは、最初の動物病院は手術前の検査結果が手術適合の基準値をはずれているのに手術を行ったことや、術後の不適切な投薬が慢性腎不全およびアジソン病と腹壁ヘルニアを発症した原因で、死亡原因の急性中枢神経障害などはアジソン病の治療薬の副作用によるものと考え、動物病院に対し、高額な腎臓病食の費用などの治療費や慰謝料などを求めて訴えました。

不適切な投薬など、獣医師の注意義務違反が認められた

動物病院側は「初診時から慢性腎不全とアジソン病の状態だった」と主張しましたが、裁判では、手術前の検査結果に対する処置や、手術後の投薬が不適切として、獣医師の注意義務違反が認められました。また、不適切な治療により慢性腎不全とアジソン病になったことも認められました。

一方で、死亡原因とアジソン病の因果関係などは否定され、飼い主さん側の主張は、一部のみが認められました。

判決は……動物病院に116万円あまりの支払いが命じられた!

獣医師の注意義務違反が認められた(イラスト/macco)
獣医師の注意義務違反が認められた(イラスト/macco)
このケースでは、最初の検査結果が手術適合の基準値をはずれていたにもかかわらず手術が行われています。愛犬が手術を受ける場合はよく獣医師の説明を聞き、わからないことは質問するなどして、納得してから受けるようにしましょう。また、日ごろからかかりつけの動物病院をもち、獣医師との信頼関係をしっかりと築いておきたいものです。

参考/『いぬのきもち』2018年5月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/macco
構成・文/豊島由美
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