ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、東京地方裁判所で平成14年11月11日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
マンション住人から苦情が殺到した!
吠え声で近隣に迷惑をかけて訴えられてしまった
Aさんの愛犬はよく吠える犬ですが、小型犬でマンションで生活をしていました。ところが、住んでいるマンションには「他の居住者に迷惑等を及ぼすおそれのある動物の飼育禁止」という規約がありました。マンション内の住人からはAさんの愛犬の吠え声に対する苦情が殺到していたため、Aさんは飼育禁止を求められます。そこでAさんは、マンション内を歩かせない、犬の吠え声で苦情を受けないように防止対策を行うなどの念書を管理組合に出し、犬の飼育を継続していました。ところが、一向に吠え声はおさまらず苦情も続いたため、マンションの管理組合は犬の飼育禁止と、裁判の弁護士費用相当額の賠償を求めてAさんを訴えました。
裁判では、愛犬の吠え声に対する苦情がたくさん取り上げられた
Aさんは「犬は他の居住者に迷惑等を及ぼすおそれのある動物にあたらない」などと主張し、飼育の継続を求めました。ところが裁判では、「犬の鳴き声はキャンキャンととてもうるさい」「朝の4時ごろでも鳴いている」「飼い主さんが帰宅しただけでも吠える」「寝ついた夜半過ぎに犬の吠え声やそれを注意する声が聞こえて目が覚めることがある」など、マンションの住人からの苦情が多数取り上げられ、現実に他の居住者に迷惑を及ぼしていると認められました。飼い主さんの主張は認められず、犬の飼育禁止と80万円余りの損害賠償の支払いが命じられました。
判決は……飼育中止と80万円余りの支払いが命じられた
このように飼い主さんにとってはかわいい愛犬でも、吠え声は近隣からの苦情の原因になることがあります。ふだんから散歩や遊びで愛犬のパワーを発散させておいたり、吠え声で迷惑をかけないように心がけましょう。また、マンションの管理規約は、必ず入居前に確認しましょう。
参考/『いぬのきもち』2018年7月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/macco
構成・文/豊島由美