ホントにあった、犬にまつわる事件簿を紹介!
過去に実際に起こった犬がらみのトラブルと、それに対して裁判所から下された判決について解説します。同じような事件が起こった場合の参考になります。
今回ご紹介するのは、東京地方裁判所で平成18年1月24日に判決が出た事例です。
※この記事の解説は、ひとつの例にすぎず、まったく同一の解決・判決を保証するものではありません。個々の事件の判決については裁判所に、解決策はその当事者に委ねられます。
お話してくれたのは……渋谷 寛先生
弁護士/渋谷総合法律事務所。ペット法学会事務局次長。動物の医療過誤訴訟を担当するなど、ペットと法律の問題に力を注ぐ。共著に『Q&A ペットのトラブル110番』(民事法研究会)など。
急ブレーキの衝撃でカゴごと落ちた
愛犬を助手席に乗せて走行中の事故。愛犬は衝撃で助手席から落下
Aさんが愛犬を同乗させて運転中に、突然、前方に停車中の車が車庫入れのために後退を始めたため、よけることができずに接触する事故にあいました。愛犬は、助手席へ置いたカゴに座らせた状態でしたが、事故の際に急ブレーキを踏んだ衝撃で、カゴごと助手席から落ちてしまいました。その後、愛犬が事故の2~3時間後に嘔吐したため、Aさんは心配になり動物病院を受診させたところ、軽度打撲との診断を受けました。
ケガは軽いものでしたが、様子を見るために週に1~2回通院するよう獣医師から指示を受け、約1カ月の間、計7回にわたり動物病院を受診させました。獣医師からもう通院の必要はないと言われましたが、その2週間後にも具合が悪そうに見えたため、別の動物病院を受診。Aさんは、愛犬の治療費の損害賠償などを求めて、事故の相手方のBさんを訴えました。
獣医師が必要と判断した治療の費用は、事故の相手方に支払ってもらえる判決に
裁判ではAさんにも落ち度があるとしたBさんの主張は退けられ、動物病院での診断は軽度打撲と軽いケガながら、獣医師の指示により治療を継続したことから、最初の動物病院に支払った3万5000円余りは事故による損害と認められました。しかし、獣医師に通院の必要がないと判断されたあと、別の動物病院を受診した治療費については認められませんでした。
判決は……治療費3万5000円余りが認められた!
このケースでは、運よく愛犬は軽いケガで済み、かかった治療費も相手方に支払ってもらえる判決が出ましたが、Aさんがもう少し愛犬の安全に配慮した乗せ方をしておけば、ケガそのものを防げた可能性も。愛犬を車に乗せるときにクレートに入れる場合は、クレートの持ち手にシートベルトを通し固定するなど、安全に配慮するようにしましょう。
参考/『いぬのきもち』2018年10月号「ホントにあった犬の事件簿」
イラスト/macco